「……終わっちゃったね」

「うん、綺麗だったな……拓海ありがとうな」

俺はわざと『ありがとう』という言葉を吐いた。勿論花火のこともあるがそれだけじゃない。

拓海には感謝してもしきれないからだ。

拓海がいなかったら、俺という人間はいまよりもっとダメ人間だったと言い切れるし、拓海との何気ない日常が、俺にとって今まで生きてきて一番のタカラモノだと胸を張っていえる。

俺はこの先、拓海以上の『特別』に出会えることもなければ誰かを『特別』だと感じることはない。

──この名前のつけれない『特別』な関係に出会えたことはきっと運命ってやつだ。

「拓海」

「ん? なに」

「これやる」

俺は持ち歩いていたソレをポケットから取り出すと、ぽいと拓海に向かって投げた。

「おっと」

拓海はソレを両手でキャッチすると、大きな二重瞼をこれでもかと見開いた。

「葵これ……」

「暇だったから」

「絶対ちがうじゃん。ここの神社、合格祈願でめちゃくちゃ有名で全国からお守り貰いにくるってテレビでやってたし。それに暇だからってお金もかかるのに……わざわざ他県の山奥まで行かないでしょ」

俺は黙って頭をガシガシと掻いた。

「……僕の為にバイトしてくれてたんだ」

「違うし。することなかっただけ」

「……葵、ありがとう。大事にする、僕必ず合格してみせるから」

葵は俺に満面の笑みを向けると何度もお守りを見つめてから、大事そうにリュックに仕舞った。

「僕も……ちょうど良かったな」

「何が?」

俺が目を丸くしたのを見ながら拓海がリュックから何かを取り出すと、俺の胸元にそれをトンと押し付けた。

「えっ……拓海、これ」