「長い付き合いの僕たちにも、初めてやることがあったなんてね」

「なんだよそれ、って……まぁ確かにな。拓海としてないことの方が少ないよな」

「だね、キャッチボールも葵としたのが初めてだったし」

「屋根伝いに互いの家出入りしたのもな」

「あはは、それこの間やったよね」

「やってること、子供の頃から変わってねーじゃん」

何気ない俺の言葉に拓海が少しだけ寂しそうな顔をした。

「……そう見えるけど……でもさ」

「拓海?」

「ううん。なんもない」

拓海はふっと笑うと、俺に花火を手渡しライターで火を点けた。ジュッという音と共にすぐに花火の先端から火花が上がった。

「すっげ」

「僕にも火もらっていい?」

俺は拓海の花火に自分の花火を近づけて点火した。瞬く間に拓海の花火からも火花が上がり、二つのまばゆい明かりが煌めきながらゆっくりと根元めがけて燃え上がっていく。

「ライターでつけんの面倒だから火絶やさないようにしようか」

「りょーかい」

俺と拓海は互いの花火が終わりそうになるたびに、どちらかの花火を点火させて絶やすことなく繫いでいく。

なんだかその様が互いを無意識に求めて、気づかぬうちに足りない何かを補い合ってきた俺と拓海の関係のように思えて、俺は花火の明かりを目に焼き付けるようにじっと見つめていた。

花火は赤から黄色になって緑になり、白銀の光をひときわ強く放つと最後は白い煙となって、ゆらゆらと星空へ吸い込まれていった。