その言葉に一瞬頭が真っ白になる。

(付き合って? それどうゆう……)

「葵、見てよ」

拓海が背負っているリュックをこちらに向けると、リュックのポケットから花火が飛び出している。

「毎年野球部で花火してたけどさ、今年はみんな忙しくて花火の話でなかったから。僕たちだけでしよ?」

「あ……そういうこと」

「え? なに? 僕なんか変な事いった?」

俺は額に滲んだ汗を腕で乱暴に拭った。

(付き合ってとかいうから……びっくりしただろ)

「……いや別に、しょうがないな。付き合ってやるよ」

「はは、変なの。じゃあ海まで競争ね」

拓海は白い歯を見せるとすぐに全速力で駆けていく。

「おい、待てよっ」

俺は唇を持ち上げると得意の俊足で拓海の後ろ姿を追いかけた。