俺が今日、電車の中から撮った田舎の風景写真に『いいね』がひとつついている。

拓海は滅多にSNSに投稿はしないが、俺のSNSは忙しい合間を縫ってみてくれてるようで、俺の投稿には必ず拓海の『いいね』がついている。

そんな拓海の夏休みに入ってから変えられたヘッダー画像は、綺麗に六面揃えられたルービックキューブと野球ボールが映っている。

拓海の決意と俺への無言の応援メッセージが素直に嬉しかった。

「俺も……明日でバイト終わるし、ちゃんと進路決めないとな」

正直、夏も終わりに近づけば自然と俺の中にも焦る気持ちが生まれる。自分だけが道の真ん中でただ何もできずに立ち止まってるみたいな気持ちになる。

そして俺の脇を同級生たちが意気揚々と駆け抜けて、俺だけがひとり取り残されていくような焦燥感が沸きあがって来る。

何よりいつも隣に居た拓海がずっと先の方まで行ってしまった気がして、追いつきたくても追いつけなくて、気づけば虚しく心にどんどん色がなくなっていくようにさえ感じてしまう。


「……どうしたもんかな……」

拓海と顔を合わせなくなって三週間。こんなにも長く顔を見ないことも話さないことも初めてだ。会えない月日がどんどん俺の心の中を空っぽにしていくみたいだ。

「慣れんのかな、俺」

来年からは俺の隣に拓海はいない。
そう思うだけですぐに胸が苦しくなってくる。

自分がここまで拓海に寄りかかって、依存していたことを思い知って自分でもどうしたらいいのかわからない。嬉しいことも楽しいこともなんでも半分こで、悲しいことも腹が立つことも、いつもいつも隣に拓海ががいたから分け合えた、乗り越えられた。

家族でもない。
ただの友達でも恋人でもない。
この関係に名前なんてつけれないが俺にとっては紛れもなく、拓海は『特別』だ。


「はぁあ。この気持ち……どうにかしなきゃな……あと……これもいつ渡すか……」

俺は御守りをもう一度暗闇の中で翳すと、ようやく重たくなってきた瞼をそっと閉じた。