自室の勉強机の引き出し。
 開けていないというのにホコリをかぶった引き出しの中。狭くて浅い引き出しの中。手を伸ばさねば届かない奥に、僕の八面ダイスは今も押し込まれている。
 僕が持っているサイコロのどの面にも、鈴夏のおきにいりのキャラクターはいない。当然だ。これは彼女のではなく、僕が中途半端な気持ちで作った出来損ないの作品のほうだからだ。
 ただ一つ、鈴夏のショートヘアーの横顔を描いた一面をのぞいては。
 その白黒の横顔を見つめていつも思い浮かぶのは、文化会館でのスケッチのことではない。
 最後の二週間の、あの日、体育倉庫のすみでうずくまって震えている鈴夏の姿だった。