*
「いない」
写真の時刻まで残り二十分。
白河先輩は、まだ見つからなかった。
皆にも焦りが出始める。
「――ここにもいないな」
「いませんね」
クローバー集め張本人の自分が何もできないのを気にして、せめて役に立てればという気持ちなのか、和歌子も必死になってフロアを探していたが、彼女の頑張り虚しく白河先輩は見つからなかった。
和歌子は僕の顔を見て首をかしげる。
「結人さん、どうしたんですか? さっきからやけにぼーっとしてますけど」
「――何でもないよ」
その時、だれかのスマホの通知音が鳴る。
「今、バスケ部の先輩から連絡があってな」孝慈だった。
「何か分かったの?」僕ははっと顔を上げる。
「心当たりは無いらしい。だが、」
「だが?」
「――バスケ部の先輩づてに白河先輩と連絡が取れてな。今ここの屋上にいるから話さないかって」
「本当!?」
「これってつまり、先輩は本当に何か抱えこんでて、俺たちに打ち明けたいってことだよな」
と孝慈が深いため息をついた。
「じゃ、じゃあ、結人さんが言ってた通り、飛び降り……」和歌子が慌てる。
「白河先輩、ああ見えてじつは何か抱えてたのか――?」
孝慈がごくりと唾を飲んだが、僕は納得がいかなかった。
「――じゃあ、あの未来写真のポーチは? 意味のあるアイテムじゃなかったのか?」
僕が言っている間に、孝慈はさっさと上りのエレベーターの前に立った。
「白河先輩の転落と、ポーチの有無とは、あまり関係なかったってことだろ?
自発的にフェンスに登るとしても、普通はポーチを床に置いてからだろうし。写真に写ってなかったのも、結局はそういうことだったんだろ」
孝慈は早口で答えてから、本当に申し訳なさそうに言う。
「まぁ、ポーチのことは元々俺が言い出したんだし、それで加澤の推理を混乱させちまったんなら、後で土下座して謝るよ」
「でも、ポーチが――」
「もう時間もないし、行くぜ。……あーあ、俺の推理、けっこう自信あったんだけどな」
「うん。でも、まだ何か引っかかってて……」
「いない」
写真の時刻まで残り二十分。
白河先輩は、まだ見つからなかった。
皆にも焦りが出始める。
「――ここにもいないな」
「いませんね」
クローバー集め張本人の自分が何もできないのを気にして、せめて役に立てればという気持ちなのか、和歌子も必死になってフロアを探していたが、彼女の頑張り虚しく白河先輩は見つからなかった。
和歌子は僕の顔を見て首をかしげる。
「結人さん、どうしたんですか? さっきからやけにぼーっとしてますけど」
「――何でもないよ」
その時、だれかのスマホの通知音が鳴る。
「今、バスケ部の先輩から連絡があってな」孝慈だった。
「何か分かったの?」僕ははっと顔を上げる。
「心当たりは無いらしい。だが、」
「だが?」
「――バスケ部の先輩づてに白河先輩と連絡が取れてな。今ここの屋上にいるから話さないかって」
「本当!?」
「これってつまり、先輩は本当に何か抱えこんでて、俺たちに打ち明けたいってことだよな」
と孝慈が深いため息をついた。
「じゃ、じゃあ、結人さんが言ってた通り、飛び降り……」和歌子が慌てる。
「白河先輩、ああ見えてじつは何か抱えてたのか――?」
孝慈がごくりと唾を飲んだが、僕は納得がいかなかった。
「――じゃあ、あの未来写真のポーチは? 意味のあるアイテムじゃなかったのか?」
僕が言っている間に、孝慈はさっさと上りのエレベーターの前に立った。
「白河先輩の転落と、ポーチの有無とは、あまり関係なかったってことだろ?
自発的にフェンスに登るとしても、普通はポーチを床に置いてからだろうし。写真に写ってなかったのも、結局はそういうことだったんだろ」
孝慈は早口で答えてから、本当に申し訳なさそうに言う。
「まぁ、ポーチのことは元々俺が言い出したんだし、それで加澤の推理を混乱させちまったんなら、後で土下座して謝るよ」
「でも、ポーチが――」
「もう時間もないし、行くぜ。……あーあ、俺の推理、けっこう自信あったんだけどな」
「うん。でも、まだ何か引っかかってて……」