孝慈はフェンスの外の足元を指差す。
「見ての通り、金網の外には一メートルの余裕があるよな。これだよ」
「……つまり?」
もったいぶる孝慈に、松野が続きを促す。孝慈は待ってましたと言わんばかりに推理の続きを披露する。
「白河先輩はあのゲテモノ妖怪キーホルダーをとても大切にしてる。話では、旅行の時とかも肌身離さず持ち歩いているそうな。
そんな大事なキーホルダーがフェンスの外側のへりに落ちたもんで、先輩はポーチを置いて、よじ登った。先輩はそのまま足を滑らせて落っこちるってわけ。
――どうだい、俺の推理は」
「おお、孝慈さんにしては意外とマトモです!」
「ずこーっ」
「他の可能性はありませんか?」
と和歌子は僕に聞く。
浮かんだのは、事故ではない、という可能性だ。
「白河先輩、何か家庭や学校で問題を抱えているとかは? 自発的な飛び降りだとか、あまり考えたくないけど一応ね」
孝慈は首をかしげ、スマホを操作する。
「うーむ、そういう話は知らないな。とりあえず、バスケ部の先輩あたりにメッセ送って聞いてみるよ」
「彼女、何か問題を抱えてるふうには見えませんでしたけど……そういうウワサも聞きませんし、裏表のない方に見えました。明るくて、人気者で――」
「……僕は知ってるけどね」
明るくて、人気者で、完璧。そんな太陽のひかりの中で、暗い影を抱えていた彼女のことを。
「? 結人さん、なにか?」
「何も。白河先輩にだって何かしらあったって不思議じゃないと思うし、その線もあるかな、って考えただけ」
「見ての通り、金網の外には一メートルの余裕があるよな。これだよ」
「……つまり?」
もったいぶる孝慈に、松野が続きを促す。孝慈は待ってましたと言わんばかりに推理の続きを披露する。
「白河先輩はあのゲテモノ妖怪キーホルダーをとても大切にしてる。話では、旅行の時とかも肌身離さず持ち歩いているそうな。
そんな大事なキーホルダーがフェンスの外側のへりに落ちたもんで、先輩はポーチを置いて、よじ登った。先輩はそのまま足を滑らせて落っこちるってわけ。
――どうだい、俺の推理は」
「おお、孝慈さんにしては意外とマトモです!」
「ずこーっ」
「他の可能性はありませんか?」
と和歌子は僕に聞く。
浮かんだのは、事故ではない、という可能性だ。
「白河先輩、何か家庭や学校で問題を抱えているとかは? 自発的な飛び降りだとか、あまり考えたくないけど一応ね」
孝慈は首をかしげ、スマホを操作する。
「うーむ、そういう話は知らないな。とりあえず、バスケ部の先輩あたりにメッセ送って聞いてみるよ」
「彼女、何か問題を抱えてるふうには見えませんでしたけど……そういうウワサも聞きませんし、裏表のない方に見えました。明るくて、人気者で――」
「……僕は知ってるけどね」
明るくて、人気者で、完璧。そんな太陽のひかりの中で、暗い影を抱えていた彼女のことを。
「? 結人さん、なにか?」
「何も。白河先輩にだって何かしらあったって不思議じゃないと思うし、その線もあるかな、って考えただけ」