和歌子はあたりを見回す。
「途切れとぎれですが、不幸の反応が……うーん? やっぱりダメみたいです」
 松野が別の場所を見回す。
「写真だと、彼女はどこかの建物から落ちてた。高い場所」
「ふむ、未来写真が高い場所ということは……、あ! ここのデパートの中ですか?」
 たしかに、先輩はさっきデパートのほうに消えていった。
「ああ。探してみよう」

 デパートの入り口をくぐった時、ずっと写真を覗き込んでいた孝慈が「あっ」と声を出した。
 何かに気づいたのだろうか、孝慈はようやく顔を上げる。
「俺、さっきから気になってたんだ。この写真の中の白河先輩、なんかさっきと違うようなって。違和感があったんだけど、今わかった」
「違和感だって?」
「ああ。さっきの白河先輩、肩からポーチかけてたよな。あの妖怪キーホルダーの束がついた」
「うん」
「けどよ、この写真だと、ポーチが無いよな」
「え、本当?」
 僕は写真をまじまじと見る。
 たしかに、ビルから落ちている写真の中の白河先輩は、あのポーチを持っていないようだ。
 孝慈は言う。
「デパートかどっかから先輩が落ちるとき、持ってたポーチが先に落ちたのかも。そう考えるのが普通だけど、もしかしたら、ポーチがないのはもっと別の理由かもな」
「それって、手がかりになるかもね。白河先輩が見つかるまでは、唯一の」
 僕は写真の全く別の場所、右下の数字を見て、声が上擦る。
「――って、この日付、今日!? もうすぐ時間じゃないか」
 未来写真の時刻は、今からたった一時間後だった。