*
僕たちは稲田先生を見つけるべく、教室や図書室、体育館などを探し回った。そして、最後に家庭科室へとたどり着く。
「……お? 誰かいるぜ」
家庭科室に入ると、こちらではなく、隣にある小部屋のほうから物音が聞こえてきた。家庭科準備室だ。
「……先生?」孝慈が準備室のドアをそっと開ける。
「――っ!」
誰かがやって来ることに既に気づいていたようで、稲田先生はなにやら机の上のものを必死にかき集めて鞄にしまっていた。
「先生、さっきは――」孝慈が言った。
だが、稲田先生は耳を貸さず、
「なんでもないからな! 俺はなにもしてない、準備室の片付けを頼まれてただけなんだ!」
と言い捨てて、脱兎の如く準備室から出ていった。後にはやはり、僕たちだけが残される。
「今の態度……先生、まさか家庭科室から何か盗んで……悪いことしてたんですか」和歌子が心配そうに言う。
「いやぁ、さすがに違うと思うよ」
「それでも挙動不審なのは変わりませんね」
「そういや、何冊か本もしまってたが、よく見えなかったぜ。昨日図書館で借りてた本かな」
準備室を見渡すと、ただでさえ狭いスペースに棚が何個もあって、長テーブルが一台、縦になって押し込まれている。
さっきまで先生がいたテーブルの上には、コンセントに繋いだままのミシンが置いてあった。
「――なるほど。先生の行動の意味、だいぶ分かったかも」
「ちょっと、加澤くん」
ミシンを見て思案していると、松野に袖をつかまれた。
「ん?」
「この箱なんだけど」
僕たちは稲田先生を見つけるべく、教室や図書室、体育館などを探し回った。そして、最後に家庭科室へとたどり着く。
「……お? 誰かいるぜ」
家庭科室に入ると、こちらではなく、隣にある小部屋のほうから物音が聞こえてきた。家庭科準備室だ。
「……先生?」孝慈が準備室のドアをそっと開ける。
「――っ!」
誰かがやって来ることに既に気づいていたようで、稲田先生はなにやら机の上のものを必死にかき集めて鞄にしまっていた。
「先生、さっきは――」孝慈が言った。
だが、稲田先生は耳を貸さず、
「なんでもないからな! 俺はなにもしてない、準備室の片付けを頼まれてただけなんだ!」
と言い捨てて、脱兎の如く準備室から出ていった。後にはやはり、僕たちだけが残される。
「今の態度……先生、まさか家庭科室から何か盗んで……悪いことしてたんですか」和歌子が心配そうに言う。
「いやぁ、さすがに違うと思うよ」
「それでも挙動不審なのは変わりませんね」
「そういや、何冊か本もしまってたが、よく見えなかったぜ。昨日図書館で借りてた本かな」
準備室を見渡すと、ただでさえ狭いスペースに棚が何個もあって、長テーブルが一台、縦になって押し込まれている。
さっきまで先生がいたテーブルの上には、コンセントに繋いだままのミシンが置いてあった。
「――なるほど。先生の行動の意味、だいぶ分かったかも」
「ちょっと、加澤くん」
ミシンを見て思案していると、松野に袖をつかまれた。
「ん?」
「この箱なんだけど」