「次に、三つ目の制約です」
 和歌子は手すりに片手を預け、街並みに目をやりながら続ける。
「皆さんも学校の外を眺めてみてください。
 ここからは歌扇野の市街地がよく見えますね。ここから目視できる範囲が、わたしの予知能力が通じるエリアです」
「時計台から見えるとこだけ、っと」
 孝慈は言われた通りに手すりに近づいて、ぐるりと外の景色を見渡す。
「そうなると、ほとんど歌扇野の中心地だけだな。逆にあの川のほうとか、郊外のショッピングモールなんかは無理そう」
「そうなりますね。加えて四番め。
 不幸は、ある程度大きなものでないと、予知できません。小さなものにはレーダーは反応しないし、写真も撮れない。
 仮にそれを解決しても、クローバーの葉が集まることは無いです」
「あ、じゃあ昨日コージがお皿を割りそうになったり、勝手に厨房を抜け出して店長に怒られたりしたのは」
「不幸とは呼べないとぉ?」孝慈は不満そうに言った。
「そうそう、分かりやすいですね。加えてもう一つ、制約があります。
 それは、わたしが予知できるのは、不幸が起きるまで一週間以内の人のみということです」
と和歌子はつけ加えた。
「制約が多いんだな。
 不幸とやらが分かる範囲が狭いのもだし、一週間以内の人だけっていう期限も。なにより、一枚の写真で不幸の正体が分からないのが」