用事が終わるまで体育館で待っている、と孝慈たちは言っていた。
 僕は現校舎と旧校舎とを繋ぐ廊下を歩く。今は昼だが、夕方になると西日のきつくなる廊下だ。
 この廊下を曲がってまっすぐ行けば、旧校舎の体育館に通じている。
 松野は体育館、青いネットで区切られた二面コートの端っこにいた。
 練習が始まる直前の、バスケ部のシュートのようすを体育座りでじっと見つめている。
 僕は声をかける。
「ごめん、遅くなって。それで、コージはどこに?」
「……あっち」
 体育館から入って左側、バスケ部側のコートを松野が示した。
 松野の視線の先、そこに孝慈はいた。
 半袖のワイシャツを着たまま、バスケ部のちょっとしたウォーミングアップに混じって。孝慈はバスケ部員とワンオンワンをしていた。
 腰を落として両手を広げるディフェンスの孝慈。
 彼がシュートに向かう部員の動きを阻んで左右に動くたびに、床を鳴らすシューズの音が小気味よく響く。
「コージ、お前めちゃくちゃ良いな」
 ワンオンワンを眺めていたバスケ部の上級生が言う。
「サンキューっす、先輩」
「なんだったら今からバスケ部に入っても良いんだぞ。お前なら一年生にしてベンチ入り間違いなしだ」
「途中入部っすか、ハハハ。――じゃあ俺はこのへんで」
 ワイシャツ姿の孝慈は先輩の冗談とも本気ともつかない勧誘を適当にかわすと、僕たちのほうに走ってきた。
「よう。加澤が遅かったから、バスケ部に混じってた。カラダ動かしたくなっちゃって」