「その通り。葉っぱを集めるには、先程の松野さんのように、未来を予知して誰かの不幸を解決することが必要です。
 ただし、不幸解決は幸運のチカラを借りて、つまり結人さんと協力して解決する必要があるので――、問題はそこなんですよね」
 和歌子はそこまで言うと、こちらをじっと見つめた。
「……僕の協力が得られるかどうかってこと?」
「はい」
「なるほど――? その前に、ちょっと気になってたんだけどさ」
 気になることがあるというよりは、返事を保留したくて話をそらした。
「本屋のとき、どうしてあのタイミングで抱きついて……いや、話しかけたのかなって。
 ほら、ちょうど松野が何か言おうとしたときだったから。何か意味があったのかと思って」
 考えられるのは、和歌子が松野のする話の内容を知っていたから、という理由。
 正直なところ、松野が何を言いたかったのか、少し気になっていた。しかし和歌子は首を横に振る。
「瑞夏さんの不幸が起きるまで時間が無くて、仕方なくそうなっちゃったんです!
 わたしだって、あんな良い雰囲気の時におふたりの間に割り込みたく無かったですよ!」
「ふ、雰囲気? 和歌子ちゃんは、松野が何を言おうとしたのかを知ってたの?」
 僕が聞くと、和歌子は両腕をじたばたさせて慌てだした。
「そ、それは言えません! 瑞夏さんに悪いですし」
「え、松野?」
「…………」
「瑞夏さん、ほんっとにごめんなさい……」
「松野が何かしたの? さっきは――」
 なにか大事な話があるみたいだったけど――? 言おうとすると、松野ははげしく首を振った。
「ダメっ――そんなんじゃないって、和歌子ちゃん! ……加澤くんも、さっきのことは気にしないで」
 松野にしてはめずらしく、大きな声だった。珍しいといっても、初めてまともに会話をしたここ三十分の中で、という意味だが。
「……はい、ごめんなさい」
 和歌子はしゅんと肩をすぼめた。
 松野を見ると、きょろきょろと周囲を気にしている。大きな声を出したことを気にしているようすだ。
「店の中には学校の知り合いもいないみたいだし、だいじょうぶ……だと思う」
 僕が言うと、松野は答えた。
「同じクラスの……小野寺くんがいた」
「え、小野寺が?」
「うん」
「って、誰だっけ」
「がっくり」
 松野は頭をテーブルにつけて言った。こんなリアクションもとるんだ。今までに教室のなかで見たことがない反応だったので、とても驚いた。