*
僕は松野と一緒に、孝慈と和歌子と合流した。
葉っぱ集めという本来の目的が終わって、皆で祭りを見てまわることになった。
だけど、そう。まだ、松野の未来写真が変化しないのだ。
この未来写真のことで、僕にはひとつの予想があった。
それは、小野寺孝慈と星野鈴夏のほんとうの関係性という、足りないピース。
最後の未来写真を解く鍵は、その真実だ。根拠はないけど、そんな気がしていた。
ちょうど夏祭りのきょうは、鈴夏の命日。
今日じゅうに、それも松野との未来写真の時刻までに。
たしかに和歌子の目的は達成した。四枚集まって、もう和歌子や学校のことは大丈夫だろう。
でも、僕には、このまま夏を終わらせる気なんてない。
合流してから二十分、ようやくチャンスが訪れた。
――目の前に、コージの鞄がある。
孝慈はトイレに行った。孝慈はトイレに行くときカバンを僕に預ける癖がある。だから、僕にカバンが渡るチャンスをずっと待っていた。
松野と和歌子は、目的を果たした余韻の止まぬ中、祭りを回りに行った。
和歌子の見たいと言うおみこしを追いかけに、ずっと遠くまで行くらしい。しばらく戻っては来ないだろう。
ほんとうは、このことは和歌子にも相談したかったが、汚れ役は、自分だけでいい。
僕は確信を得るため、一人になった瞬間を見計らい、孝慈の鞄の前にしゃがみこんだ。
――数日前、松野にしたメールがあった。
『松野、孝慈の誕生日を知っている?』
『2月だった気がする。本人が前、友達に聞かれて答えてたから』
誕生日は2月。それは嘘だと思う。
公的なものを偽るわけにはいかない。でも、クラスメイト相手のレベルなら、孝慈は嘘をついているのかもしれない。
まず、僕は昨日、稲田先生に電話をかけていた。
『――孝慈の誕生日を知りたいんです』
『……ちょっと待ってくれ』
稲田先生は困惑したように言った。
『なんで、そんなことを聞きたいんだ』
『……えっと、ちょっと、ですね。知らなかったので、きちんと祝いたくて』
『明日学校来れるか? 明日コージを連れて直接来てくれるなら、教えても良さそうだ』
『本人ですか……それだけはちょっと』
『なら、答えられるかどうか分からない。最近、こういうの厳しいからさ。――まぁ、この件は後で。明日にでも折り返し電話するよ』
というのが答えだった。
だから僕は、孝慈の持ち物を、直接調べようとしている。
悪いことだとは分かっている。
だけど、これでほんとうに良いのか?
僕は、孝慈の鞄を前に、そのファスナーを開けるか開けないかを迷っていた。
でも、もうすぐ、稲田先生から、折り返しの電話がかかってくるかもしれない。
鞄を開けるのは最終手段だ。もう少しだけ、待とう……。
その時、
「…………」
責めるような視線を、背中に感じた。
「あっ――、松野……」
「…………」
僕は松野と一緒に、孝慈と和歌子と合流した。
葉っぱ集めという本来の目的が終わって、皆で祭りを見てまわることになった。
だけど、そう。まだ、松野の未来写真が変化しないのだ。
この未来写真のことで、僕にはひとつの予想があった。
それは、小野寺孝慈と星野鈴夏のほんとうの関係性という、足りないピース。
最後の未来写真を解く鍵は、その真実だ。根拠はないけど、そんな気がしていた。
ちょうど夏祭りのきょうは、鈴夏の命日。
今日じゅうに、それも松野との未来写真の時刻までに。
たしかに和歌子の目的は達成した。四枚集まって、もう和歌子や学校のことは大丈夫だろう。
でも、僕には、このまま夏を終わらせる気なんてない。
合流してから二十分、ようやくチャンスが訪れた。
――目の前に、コージの鞄がある。
孝慈はトイレに行った。孝慈はトイレに行くときカバンを僕に預ける癖がある。だから、僕にカバンが渡るチャンスをずっと待っていた。
松野と和歌子は、目的を果たした余韻の止まぬ中、祭りを回りに行った。
和歌子の見たいと言うおみこしを追いかけに、ずっと遠くまで行くらしい。しばらく戻っては来ないだろう。
ほんとうは、このことは和歌子にも相談したかったが、汚れ役は、自分だけでいい。
僕は確信を得るため、一人になった瞬間を見計らい、孝慈の鞄の前にしゃがみこんだ。
――数日前、松野にしたメールがあった。
『松野、孝慈の誕生日を知っている?』
『2月だった気がする。本人が前、友達に聞かれて答えてたから』
誕生日は2月。それは嘘だと思う。
公的なものを偽るわけにはいかない。でも、クラスメイト相手のレベルなら、孝慈は嘘をついているのかもしれない。
まず、僕は昨日、稲田先生に電話をかけていた。
『――孝慈の誕生日を知りたいんです』
『……ちょっと待ってくれ』
稲田先生は困惑したように言った。
『なんで、そんなことを聞きたいんだ』
『……えっと、ちょっと、ですね。知らなかったので、きちんと祝いたくて』
『明日学校来れるか? 明日コージを連れて直接来てくれるなら、教えても良さそうだ』
『本人ですか……それだけはちょっと』
『なら、答えられるかどうか分からない。最近、こういうの厳しいからさ。――まぁ、この件は後で。明日にでも折り返し電話するよ』
というのが答えだった。
だから僕は、孝慈の持ち物を、直接調べようとしている。
悪いことだとは分かっている。
だけど、これでほんとうに良いのか?
僕は、孝慈の鞄を前に、そのファスナーを開けるか開けないかを迷っていた。
でも、もうすぐ、稲田先生から、折り返しの電話がかかってくるかもしれない。
鞄を開けるのは最終手段だ。もう少しだけ、待とう……。
その時、
「…………」
責めるような視線を、背中に感じた。
「あっ――、松野……」
「…………」


