孝慈への疑問はいったんその推理で保留した。
 そのことは本人から、改めて聞いてみることにして。
 コージの様子とか、まだ引っ掛かるからね。結人は補足すると、続けた。
「そういえば、鈴夏がおまじないで何を願ったのかも、まだわからないね。
 けど、病気が治りますように、とか、そういうのかなって、なんとなく予想してる。
 まぁ、それならどうして、おまじないに僕たちが絡むのか謎なんだけどね」
 そして、結人は告げた。
「僕は解釈っていうかたちで、答えを出さなきゃいけなかった。でも、まだ完璧な答えじゃない。――だから、これからずっと松野と考えていきたいんだ。松野のそばで」
 それは? と瑞夏は口を動かす。
 結人はゆっくりとうなずいて、告げた。
「僕は――。たしかに、君への気持ちは星野鈴夏っていう女の子が始まりだった。
 入学式の名簿から、どことなく似た名前で。
 儚げな横顔にドキッとしたとか、本屋でいつも顔を合わせているうちに意識するようになったとか、グループワークを続けるうちに意外な一面を知って、ギャップに惹かれただとか。
 いくらでも理由なんて考えられたけど、元をたどれば、昔の未練なんていう、カッコ悪い理由なんだ。
 でも、それを抜きにして、これだけは言える。
僕は目の前にいる松野瑞夏っていう女の子が純粋に好きだ。
 カッコ悪い理由でごめん。
 けど、今この瞬間に感じる気持ちは本物だって、それだけは誓って言える。
 君のことが好きだ」