――搬送先の病院で、鈴夏が死んだ。
そのニュースを聞いた瞬間、目の前が真っ白になった。
葬儀には、行けるような気持ちじゃなかった。
残された手紙を見て、強く後悔した。
その文面は、間違いなく、どこまでも結人を想った手紙だった。鈴夏のことを疑ってしまった。彼女は自分のことを、『大切な友達』と思ってくれていたのに。
託された手紙を結人に渡せなかったという、最悪の結果を向かえた。
そして、瑞夏はシラコーの続編である、『幸運集めます!白百百高校凸凹カルテット』の、そのあるストーリーと自分とを重ね合わせ、失意の底に落ちた。
無印のシラコーは、もともと瑞夏の大好きな漫画家の作品だった。
作者の女性は、瑞夏にとっては神様のような人。
つらい過去も、バッドエンド直行のどうしようもない展開も、最後には救いに変えてくれる、そんなキラリと光る希望のような物語を描いてくれる人だった。
悪役と思っていたキャラにも、守るものがあって。ついつい登場人物をみんな応援したくなって。
なかでもシラコーは、いろいろなトラブルを勝手に解決するボランティア部の高校生達を描いた、最高に面白いドタバタコメディー。
クスリと笑えるだけじゃなくて、感動する話もあって。
シラコーは、大きな本屋に行かないと置いていないようなマイナーな少女漫画誌に載っていた作品だったが、その魅力的なキャラクターやストーリーライン、それらのおかげで評価は高かった。
続編が出る予定だったが、作者が病気で、しばらく中止扱いだった。
『幸運集めます!』が頭についたその続編が改めて出たのは、冬だった。
鈴夏の死のことを、なんとか整理できるようになってきた時期だった。
問題はその一年以上後、歌高に合格した後に出たばかりの二巻のエピソードだった。
シラコーのそのストーリーは、事故で死んでしまった親友に託された告白の手紙を出せなかった女の子が、ボランティア部に相談に来たところからはじまる。
主人公、形月ユズハたちボランティア部のメンバーは、死んだ親友がほんとうは依頼者の女の子を恨んでいたことを知ってしまう。
ユズハたちボランティア部の調査でそれがわかってしまい、ユズハは女の子のために、出てきた事実を必死に隠そうとするが、最後には女の子がそれを知ってしまい、罪の意識から自殺未遂をするという、なんの救いもないストーリーだった。
シラコーの漫画の中では、唯一その女の子だけが救われなかった。
ストーリーの中で、そのただ一話だけが。親友を裏切った女の子がその絶望を一生涯抱えながら生きていくという、救いのない結末。
その後、作者のブログでの活動報告やその話についての考察をネットで検索してみると、ちょうどその時期に精神を病んでいたらしいということがわかったが。
だが、それでも彼女はいろんなことを知っている人だと瑞夏は思っていた。人間をよく観察した緻密な描写からは、彼女の豊富な人生経験が垣間見えた。
それなのに、自分と鈴夏と重ね合わせながらその話を読んでいた瑞夏には、その展開に、神様に『お前は鈴夏を疑い、裏切ったのだ』と宣言されたようなものだった。
それでもそのシラコーの続編――『幸運集めます! 白百百高校凸凹カルテット』を忘れられず、グループの名前の案を聞かれたとき、とっさにこの漫画のタイトルから取ってしまった。
そのニュースを聞いた瞬間、目の前が真っ白になった。
葬儀には、行けるような気持ちじゃなかった。
残された手紙を見て、強く後悔した。
その文面は、間違いなく、どこまでも結人を想った手紙だった。鈴夏のことを疑ってしまった。彼女は自分のことを、『大切な友達』と思ってくれていたのに。
託された手紙を結人に渡せなかったという、最悪の結果を向かえた。
そして、瑞夏はシラコーの続編である、『幸運集めます!白百百高校凸凹カルテット』の、そのあるストーリーと自分とを重ね合わせ、失意の底に落ちた。
無印のシラコーは、もともと瑞夏の大好きな漫画家の作品だった。
作者の女性は、瑞夏にとっては神様のような人。
つらい過去も、バッドエンド直行のどうしようもない展開も、最後には救いに変えてくれる、そんなキラリと光る希望のような物語を描いてくれる人だった。
悪役と思っていたキャラにも、守るものがあって。ついつい登場人物をみんな応援したくなって。
なかでもシラコーは、いろいろなトラブルを勝手に解決するボランティア部の高校生達を描いた、最高に面白いドタバタコメディー。
クスリと笑えるだけじゃなくて、感動する話もあって。
シラコーは、大きな本屋に行かないと置いていないようなマイナーな少女漫画誌に載っていた作品だったが、その魅力的なキャラクターやストーリーライン、それらのおかげで評価は高かった。
続編が出る予定だったが、作者が病気で、しばらく中止扱いだった。
『幸運集めます!』が頭についたその続編が改めて出たのは、冬だった。
鈴夏の死のことを、なんとか整理できるようになってきた時期だった。
問題はその一年以上後、歌高に合格した後に出たばかりの二巻のエピソードだった。
シラコーのそのストーリーは、事故で死んでしまった親友に託された告白の手紙を出せなかった女の子が、ボランティア部に相談に来たところからはじまる。
主人公、形月ユズハたちボランティア部のメンバーは、死んだ親友がほんとうは依頼者の女の子を恨んでいたことを知ってしまう。
ユズハたちボランティア部の調査でそれがわかってしまい、ユズハは女の子のために、出てきた事実を必死に隠そうとするが、最後には女の子がそれを知ってしまい、罪の意識から自殺未遂をするという、なんの救いもないストーリーだった。
シラコーの漫画の中では、唯一その女の子だけが救われなかった。
ストーリーの中で、そのただ一話だけが。親友を裏切った女の子がその絶望を一生涯抱えながら生きていくという、救いのない結末。
その後、作者のブログでの活動報告やその話についての考察をネットで検索してみると、ちょうどその時期に精神を病んでいたらしいということがわかったが。
だが、それでも彼女はいろんなことを知っている人だと瑞夏は思っていた。人間をよく観察した緻密な描写からは、彼女の豊富な人生経験が垣間見えた。
それなのに、自分と鈴夏と重ね合わせながらその話を読んでいた瑞夏には、その展開に、神様に『お前は鈴夏を疑い、裏切ったのだ』と宣言されたようなものだった。
それでもそのシラコーの続編――『幸運集めます! 白百百高校凸凹カルテット』を忘れられず、グループの名前の案を聞かれたとき、とっさにこの漫画のタイトルから取ってしまった。


