*
時刻は夕方。
まだ、日没までは時間がある。
小屋の裏に、人影があった。
長テーブルの搬入をする彼は、二つの束を軽々と持ち上げている。
その人物は突然立ち止まり、大きな長テーブルを置いた。
テーブルをずらすと、彼はその隙間から板のようなものを取り出した。
それは、額縁だった。中に入っていたのは、あの、魚を掲げる釣り人の絵だ。
五十嵐さんは、茶色いシミのついた作業着のポケットから、何かを取り出した。
ライターだ。
カチ、カチ。火が付くことを確認した五十嵐さんが、釣り人の絵に、ライターの先端を近づけようとする――。
「待ってください」
僕たちは五十嵐さんの前に飛び出した。
五十嵐さんがあとずさる。
「なっ……お前ら! なにを……!」
「茂みに隠れていました。何年も見破られずに絵飾りを仕込んできたあなたにしては、ずいぶんと雑ですね。茂みの裏に誰かがいることも確認せずに」
「絵飾りか……なんのことやら」五十嵐さんが視線をそらす。
「その手に持っているライターと絵はなんすか?」と孝慈が追及する。
「ぐ……」口ごもる五十嵐さん。
僕は皆に言う。
「小屋の火事だったんだよ、花園さんに起きる不幸は」
これが、未来写真の正体だ。
絵を燃やした五十嵐さんの不始末によって、小屋に引火する。
不幸とは、その結果に起きた火事に花園さんが巻き込まれることだったのだ。
和歌子が聞く。
「ですが、未来写真で花園さんが閉じ込められていたのは、どういうことでしょう? 写真では、必死にドアをこじ開けようとしていました」
「ドアが熱で変形して開かなくなった、ということだと思う。そのまま花園さんは閉じ込められるんだろうね。火事になった小屋の中に」
その時、小屋の正面側のほうでドアが開く音がして、眠たそうな花園さんがこちらにやってきた。
「……どうしたんだ、小屋の裏が騒がしいけど」
あくびをしながらのんきそうにしている花園さん。
花園さんには構わず、続ける。
「僕たちは、はじめから五十嵐さんを疑っていました。しかし、決定打がありませんでしたよ。――五十嵐さんが絵飾りを行っていると考えるに至ったのは、サビのにおいです」
「サビ、だと……!?まさか!」
「そのテーブルの裏を見せて下さい」
「…………」
五十嵐さんは険しい顔で、運んでいたテーブルの脚に触れ、鼻を近づける。
「サビてますね。五十嵐さんの服にも茶色いシミがついていますし」
「なに」
五十嵐さんは自分の作業着の腕に、茶色いサビの跡が付着していることに気づいて、はっとした顔になる。
「自分の酒臭さを消したかっただけの花園さんの軽いスプレー程度では、使い古されたテーブルに染み付いたこれは消えないっすよね」
孝慈がニヤリとして言う。
「五十嵐さん、アンタはこのテーブルの束の間に挟んで、絵の入った額縁を運んでいた。
そして、周りに人がいなくなる瞬間を狙って、その絵を屋台に飾り付けた。
アンタは毎年この方法で絵飾りを行ってたんだよな。
はたから見りゃあ、テーブルの運搬をするただのスタッフにしか見えない」
「何だよ。お、俺が犯人だっていうのかよ! 俺は確かに、この絵を……、でもよ、花園の頭なんか……」狼狽する五十嵐さん。
時刻は夕方。
まだ、日没までは時間がある。
小屋の裏に、人影があった。
長テーブルの搬入をする彼は、二つの束を軽々と持ち上げている。
その人物は突然立ち止まり、大きな長テーブルを置いた。
テーブルをずらすと、彼はその隙間から板のようなものを取り出した。
それは、額縁だった。中に入っていたのは、あの、魚を掲げる釣り人の絵だ。
五十嵐さんは、茶色いシミのついた作業着のポケットから、何かを取り出した。
ライターだ。
カチ、カチ。火が付くことを確認した五十嵐さんが、釣り人の絵に、ライターの先端を近づけようとする――。
「待ってください」
僕たちは五十嵐さんの前に飛び出した。
五十嵐さんがあとずさる。
「なっ……お前ら! なにを……!」
「茂みに隠れていました。何年も見破られずに絵飾りを仕込んできたあなたにしては、ずいぶんと雑ですね。茂みの裏に誰かがいることも確認せずに」
「絵飾りか……なんのことやら」五十嵐さんが視線をそらす。
「その手に持っているライターと絵はなんすか?」と孝慈が追及する。
「ぐ……」口ごもる五十嵐さん。
僕は皆に言う。
「小屋の火事だったんだよ、花園さんに起きる不幸は」
これが、未来写真の正体だ。
絵を燃やした五十嵐さんの不始末によって、小屋に引火する。
不幸とは、その結果に起きた火事に花園さんが巻き込まれることだったのだ。
和歌子が聞く。
「ですが、未来写真で花園さんが閉じ込められていたのは、どういうことでしょう? 写真では、必死にドアをこじ開けようとしていました」
「ドアが熱で変形して開かなくなった、ということだと思う。そのまま花園さんは閉じ込められるんだろうね。火事になった小屋の中に」
その時、小屋の正面側のほうでドアが開く音がして、眠たそうな花園さんがこちらにやってきた。
「……どうしたんだ、小屋の裏が騒がしいけど」
あくびをしながらのんきそうにしている花園さん。
花園さんには構わず、続ける。
「僕たちは、はじめから五十嵐さんを疑っていました。しかし、決定打がありませんでしたよ。――五十嵐さんが絵飾りを行っていると考えるに至ったのは、サビのにおいです」
「サビ、だと……!?まさか!」
「そのテーブルの裏を見せて下さい」
「…………」
五十嵐さんは険しい顔で、運んでいたテーブルの脚に触れ、鼻を近づける。
「サビてますね。五十嵐さんの服にも茶色いシミがついていますし」
「なに」
五十嵐さんは自分の作業着の腕に、茶色いサビの跡が付着していることに気づいて、はっとした顔になる。
「自分の酒臭さを消したかっただけの花園さんの軽いスプレー程度では、使い古されたテーブルに染み付いたこれは消えないっすよね」
孝慈がニヤリとして言う。
「五十嵐さん、アンタはこのテーブルの束の間に挟んで、絵の入った額縁を運んでいた。
そして、周りに人がいなくなる瞬間を狙って、その絵を屋台に飾り付けた。
アンタは毎年この方法で絵飾りを行ってたんだよな。
はたから見りゃあ、テーブルの運搬をするただのスタッフにしか見えない」
「何だよ。お、俺が犯人だっていうのかよ! 俺は確かに、この絵を……、でもよ、花園の頭なんか……」狼狽する五十嵐さん。


