夜が明け、いつも通りの午前。
 松野がいて、孝慈がいて。和歌子がいて。
 いつも通りのメンバーで迎えた最終日は、夏祭り。
 透き通った空気が染み渡る八月の夏の朝。
 僕たち四人は人の集まり始めた歌扇野公園に来ていた。
「人混みに気をつけなきゃ。一瞬でもスタッフ達の動きを見逃したらアウトだ」
 午前九時。まだ出店も賑わいは少なく、準備中のものもある。
 カラフルな電飾はもちろん灯ってなくて、これぞ夏祭りだ、と言うには夕方まで待たないといけないようだ。
 それでも人の群れにはたまにぶつかりそうになる。
 そんな祭り開始の直後、じつに始まってからたった五分後だった。
「向こうが騒がしいな」孝慈が何かに気づいて言った。
 会場の奥のほうのようだ。
 孝慈の視線の先を見ると、そちらにスタッフ達を中心に人だかりができているのがわかった。
 そこはまだ準備中の焼きそばの屋台のようだった。
「『絵飾り』だ! 恒例の絵が今年も現れたぞ!」
 人だかりの中のスタッフの一人が、そう面白そうに言った。
「お前、黙ってろ!」
 スタッフを睨み付けたのは五十嵐さんだった。
「これで五年目! いや、六年目かな?」
 他のスタッフがなおも続ける。
 絵が見つかったって?
 僕たちはスタッフ達が集まっている焼きそば屋台の前に駆け寄る。
「――おい、お前ら!」
 睨み付けてきた五十嵐さんには臆さず、孝慈がさっと人混みの間に滑り込んだ。
「へぇ……いい絵じゃん」と孝慈が絵を見て開口一番に言う。
 その絵は、釣り上げた魚を天にかかげて自慢する釣り人の姿を描いたものだった。描かれているのは目を細めている男性で、嬉しそうな表情が印象的だった。
 絵は焼きそば屋台の上に、額縁に入って立て掛けられていた。
 乱入してきた僕たちを睨んで、五十嵐さんは不機嫌そうにしている。
「……ったく、よ」
「今年も、すごい」
 五十嵐さんの隣で、ホオズキさんが絵を見て感嘆している。
 スタッフの一人が何かに気づいたように言った。
「迫力があると思ったら、この絵、例年よりもでかくないか?」
「? そうなんですか?」
 たずねると、
「ああ。いつもはもうちょっと小さな絵なんだが、今年はやけにでかいからよ。なんだか、等身大のパネルみてぇだ」
 今年は絵のサイズが違う。少し気になる情報だった。
「ま、良い絵なら関係ないじゃん。サイズなんて」
とホオズキさんが言う。