明日以降の打ち合わせを終え、気がつくと夕方。もう皆が帰らないといけない時間になっていた。
 今日のところはいったん解散して、松野と孝慈と別れた直後だった。
「結人さん、大変なんです」
 僕も帰路に付こうとしていると、和歌子がこちらに走りよって来た。
 今日はもうすぐ、日没で消える時間なのだが。
「……みずかさん、が……!」
「どうしたの」
 松野が帰っていくのを見計らって、引き返してきたみたいだが……?
「瑞夏さんが、未来写真に……!」
「……え?」
 松野が、どうしたって?
「瑞夏さんが、未来写真に写りました……!」
「…………! なんだって――!」
 頭の中で反芻する。松野が、未来写真に? それって……。
「――松野にまた……何らかの不幸が訪れるってこと?」
 マトイ書店のときみたいに、何かが。
「……いや、それ以外にありえないか――」
「とにかく、この未来写真を見てください!」
 和歌子に一枚の写真を手渡される。
 写真の中には電飾や提灯が写っていて、夕闇の中に背景が照らし出されている。
 その写真は、歌扇野公園だった。提灯や電飾にライトアップがされるのは、夏祭りの当日だけ。
 写真は、松野が僕に背を向けて走り去っていく。そんな場面を、横から捉えた瞬間だった。
 松野の横顔、その頬には涙が伝っていた。
「ぇ――、泣いて……? それに、どうして僕も写ってる……」
 悲しそうな松野と、写真の中でぼうぜんとする情けない顔の自分。
 まさか、松野の不幸は僕のせいで起きることなのか――?
 未来写真の右下の日付は、写真の電飾でも分かる通り、夏祭りの日。
 時刻は夕方で、さっきの未来写真と同じく、日没の直前だと考えられる。
「――もしかしたら、結人さんと瑞夏さんが、仲違いしてしまって……」
 言葉の途中で、和歌子の分霊の姿は消えた。
 いつもより暗い日没だった。