小屋からずっと離れた、城跡の石垣の前。五十嵐さんに警戒されて、ここまで追いやられてしまった。
「ありゃりゃ、追い出されちまったよ」孝慈がぼやく。
「――ん」
「考え込んじゃってどうした? 何か言いたげだが」
僕は気づいたことを話してみる。
「あの絵って、『絵飾り』だよね」
「みたいですね」と和歌子がうなずく。
「絵飾り?」
あとの二人はピンと来ていないようだ。
「僕も詳しくは知らないんだけど、スタッフ達の輪の中心にあった絵の束は、夏祭りで話題になってるものみたいなんだ」
「へぇ、有名な画家の絵なの?」
「いいや、絵じたいが有名なんじゃなくて、『絵が現れること』で有名らしいよ」
「?? どういう意味だ?」
「うーん、なんて説明すれば良いのやら……」
「それについてはわたしから」と和歌子が助け船を出してくれた。
「六年前からです。歌扇野の夏祭り会場には、いつの間にか謎の絵が飾られているという、不思議なことが起きています。この『絵飾り』は市民や地元のテレビの間でも話題になってるみたいで」
「……なんで、絵が飾られるんだ?」
「わからないんです。それが」
「わからない?」
「ええ。毎年、会場のどこかに、額縁に入った絵が現れる。ですが、誰がどんな目的でやっているかは不明です」
「夏祭りって、人が多いのに? 誰にもバレずに絵を飾り付けるなんて、無理じゃね」
「意外と気づかないんですかね。お祭りの会場の中でも、人のいない場所や時間を狙って絵飾りは行われているみたいです。
仮に目撃者がいても、お祭りの出し物だと思って気にしないとか。
ですが、絵飾りのことは去年ついにニュースになって、地元テレビで放送されちゃったんです。なので、今年はさすがに難しいんじゃないかと」
「でも、なんでそんなことをしてんだろうな」
孝慈の言葉に、僕はそばにある城跡の石垣を見る。
今は消されているが、ここの石垣には昔、ペンキのラクガキがされてニュースになったのを覚えている。たしか、僕が小学生のころの事件で、犯人はその数日後に逮捕された。
そのことを思い出しながら言う。
「路上アートみたいなものだと思うよ。まぁ、あれはあれでかなり是非が分かれるけど……」
「ありゃりゃ、追い出されちまったよ」孝慈がぼやく。
「――ん」
「考え込んじゃってどうした? 何か言いたげだが」
僕は気づいたことを話してみる。
「あの絵って、『絵飾り』だよね」
「みたいですね」と和歌子がうなずく。
「絵飾り?」
あとの二人はピンと来ていないようだ。
「僕も詳しくは知らないんだけど、スタッフ達の輪の中心にあった絵の束は、夏祭りで話題になってるものみたいなんだ」
「へぇ、有名な画家の絵なの?」
「いいや、絵じたいが有名なんじゃなくて、『絵が現れること』で有名らしいよ」
「?? どういう意味だ?」
「うーん、なんて説明すれば良いのやら……」
「それについてはわたしから」と和歌子が助け船を出してくれた。
「六年前からです。歌扇野の夏祭り会場には、いつの間にか謎の絵が飾られているという、不思議なことが起きています。この『絵飾り』は市民や地元のテレビの間でも話題になってるみたいで」
「……なんで、絵が飾られるんだ?」
「わからないんです。それが」
「わからない?」
「ええ。毎年、会場のどこかに、額縁に入った絵が現れる。ですが、誰がどんな目的でやっているかは不明です」
「夏祭りって、人が多いのに? 誰にもバレずに絵を飾り付けるなんて、無理じゃね」
「意外と気づかないんですかね。お祭りの会場の中でも、人のいない場所や時間を狙って絵飾りは行われているみたいです。
仮に目撃者がいても、お祭りの出し物だと思って気にしないとか。
ですが、絵飾りのことは去年ついにニュースになって、地元テレビで放送されちゃったんです。なので、今年はさすがに難しいんじゃないかと」
「でも、なんでそんなことをしてんだろうな」
孝慈の言葉に、僕はそばにある城跡の石垣を見る。
今は消されているが、ここの石垣には昔、ペンキのラクガキがされてニュースになったのを覚えている。たしか、僕が小学生のころの事件で、犯人はその数日後に逮捕された。
そのことを思い出しながら言う。
「路上アートみたいなものだと思うよ。まぁ、あれはあれでかなり是非が分かれるけど……」


