名指しで批判された花園さんは、気だるそうにあくびをする。
「オレ関係ないっしょ。その絵をどーするかは、決議を採ってさっさと決めれば済む話なんだし。……ま、ご覧のとおり、そっちの反対派は過半数を越えないみたいだけど」
 花園さんの言葉を皮切りに、花園さんの側についていたスタッフ達が口々に言う。
「五十嵐、こんなことやめようぜ」
「俺も花園と同意だ。もう良いだろう? さっさと絵を公民館に戻してこいよ」
 一方、五十嵐さん側についているスタッフ達は何も言わずに、五十嵐さんの後ろで申し訳なさそうにうつむいていた。
「お前らも何か言ってやれ!」
 五十嵐さんが後ろのスタッフ達にも怒鳴る。だが、五十嵐さん側のスタッフには威勢がなくて、誰も何も言わない。
 どうやら、本当に五十嵐さん側というわけではなくて、逆らえないから彼のほうについている、そんな雰囲気だった。五十嵐さんはなにかしら、ちからのある人なんだろうか。
 そんな時、五十嵐さん側にいた一人が口を開いた。
「五十嵐、落ち着いて。
 ホオズキ、五十嵐は嫌いじゃない。でも、今年もナゾの絵、見たい」
 さっきの赤髪のホオズキさんだった。無表情のまま五十嵐さんをなだめると、
「それで、あの人たちはどなた? 絵を見に来たお客さん?」
 ホオズキさんが、入り口で成り行きを見守っていた僕たちを見て言った。
「お?」
 五十嵐さんは入り口の扉から顔を出す僕たちに気づいたようだ。
「なんだお前ら」
 五十嵐さんが番犬のように僕達をにらむ。
 僕は迫力に立ちすくみながらなんとか言い訳する。
「えっと……ちょっと祭りの下見に来てて、そしたら、迷いこんじゃって――」
「ここはスタッフオンリーだぜ。さぁ、帰った帰った」
 僕たちは言い訳するひまもなく小屋からつまみ出されてしまった。