翌日。夏祭りまで、残り一週間。
 僕たちは、松野の希望で、グループワークを続行した。ただし、松野から鈴夏のことを聞ける気配はない。
 いつものように街を歩いて。目的地の写真を撮って。
 昼を過ぎたころ、僕たちは歌扇野公園にいた。
 赤い提灯やカラフルな電飾が、塀や石垣のあちこちにぶら下がっている。
 歌扇野公園だけじゃない。近くの大通りにも。夏祭りまで一週間、その匂いは確実に町中に溢れ出していた。
 祭りのプログラムのひとつであるステージ発表はここで行われ、多くの屋台も立ち並ぶ。夜はメインイベントである花火大会が行われる。
 歌扇野公園での祭りは春の桜祭りがメインだが、この城跡は夏祭りの時も、花火を見るための絶好のスポットになる。
 お祭りムードとは対照的に、僕たちは松野が抱える煮えきらない秘密とともにそこにいた。そして僕の中には、昨日の孝慈の態度への引っ掛かりもあった。
 だが――、
「未来写真の被写体が――見つかりました!」
 いつものようにつぶやいた和歌子の言葉で、それらはいったん置き去りになった。
 僕は皆と顔を見合わせる。
 これで、最後。
 和歌子の髪飾り、そのクローバーの葉は、今三枚だ。これを解決して四枚になれば、僕たちの目的は達成される。
 電飾や提灯がぶら下がり、あたりには作業着を着た人たちの姿が見え、出店の準備が進んでいる。
 そんな祭り会場で、僕たちは一人の男性を見ていた。
 準備中の会場に、和歌子が未来写真の被写体を発見した。
 和歌子がその人物を撮影するため、後を追いかける。
「……あの人?」
 被写体は、作業着を着て野球帽をかぶった男性だった。キャップからはみ出した髪の下からは、耳に付けたピアスが見えた。
「歌高の関係者か?」
 三十歳くらいだろうか。生徒ではないし、先生でもないみたいだ。
「歌高の卒業生の人みたいです。おそらく」と和歌子が言った。
 野球帽の男性が入っていくのは、丸太で組んだ木造の小屋だった。
「小屋に入ってくよ。お祭りのスタッフの人かな?」
 男性が入った小屋に近づくと、中から何人かの話し声が聞こえた。時おり苛立ったような声も聞こえてくる。
 僕たちは思いきってドアノブをまわし、小屋の中をのぞいてみる。
 粗末なつくりの小屋で、上のほうは天井の梁がむきだしになっていた。入り口の壁には、木材に打ち込まれた釘が曲がって何本か飛び出している。
 この小さな小屋の中にはたくさんの人が集まっていて、ざっと二十人以上はいる。
 彼らは、何か言い争っているようだ。
 床にはじゅうたんが敷かれていて、入り口には土足禁止の貼り紙とともに、彼らの長靴がたくさん置いてある。
 入り口から入ったすぐ横には、折り畳み式の長机やパイプ椅子、それから屋台の看板のようなものもある。ここは祭りの準備のために使われる小屋のようだ。
 すると、あの人たちは夏祭りのスタッフなんだろうか。