地方大会が近いというのに、どうしても結人くんに何かを伝えてみたくて、いまこの手紙を書いています。
 言いたいことたくさんあったはずなのに、いざ机に向かうと何て書いたらいいかわからなくて困った。けど、頑張って書いてみる。
 とつぜんですが、私の家には、ちょっとした事情があります。
 だから私は、推薦に、学費免除に、給付型の奨学金など、高校に入ってからのこと、そして大学に入ってからのこと、いろいろ考えてます。
 この大会で結果を残して、未来を少しでも確実にしたい。
 だから、私は走るつもりです。
 そして、私は生きるつもりです。
 病気で、もう何年かしたら体が動かなくなるかもしれない。
 だけど私は、高校生になりたい。
 瑞夏っていう子と教室で話したい。――結人くんはまだ高校を決めてないんだっけ。きみは頭が良いんだし、来ちゃいなよ、歌扇野高校。一緒に歌高の歴史をつくろうぜ、なんてね。
 さて、最後に、結人くん。わたしの病気のことなんだけど。
 今のうちに、メッセージを送らせてほしい。
――言うよ。
 私が死んで、それからもずっと想ってたら許さないからね。
 私はきっと、大好きな人に看取られることになるだろうから。
 それだけでも充分すぎるのに、私がいなくなってからも結人くんが縛られるようなら、それは不幸だよ。私にとっても、きみにとっても。
 私のほんとうの性格のこと、唯一知ってるきみならわかるよね?
 だから、この先あなたに訪れるであろう未来、そのすべての未来で、星野鈴夏は、加澤結人くんの幸せを願っています。
 きみは私の、はじめての『大切な友達』、そして最初で最後の『大切な人』だから――。