終わってしまう。シラコーを読み終えることが、終わりを示しているようで、それまで買った十二巻のさきが読めなかった。
 全部で十六巻。残りはたった四冊のはずなのに、十三巻目を読み進めるのは雪山で遭難しながら登頂を目指すような苦しみだった。
 やがて、本棚にその漫画があることじたいが辛くなって、結局、シラコーの漫画を全て処分した。
 それに、鈴夏が死んだことで、皮肉にも、偽らない本心の自分でいられるようになった。
 だから、高校に入ってからの僕は、人づきあいの悪い、つれないヤツ。
 せっかくのクラス会にも来てない、なんだよアイツ。そんなふうに思われていることはもう知っている。
 思い出なんて、いらない。そう心から思っていた。
 それでも、鈴夏の横顔を描いたあの八面ダイスだけは捨てきれずに、今でも自室の机の引き出しの奥に押し込めていた。
 あれから二年後の、いま。
 僕はゆっくりと口を開く。彼女がつけた、僕たちのグループ名。
「幸運集めのフォークローバー」。
 その由来を、目の前の彼女、松野瑞夏に聞くことで、こんな未練に決着をつけたかった。
 そんなことしたって、この気持ちが晴れるわけじゃないのに。
「……ねぇ、松野ってさ--」