「癖なんだと思う。ジャンルはあんまり気にしないで、面白そうなら何でも読むよ。食わず嫌いして、面白い作品に出会えなかったら、もったいないじゃん」
「へえ。普段からそんなこと考えてるんだ。で、話戻るけど――君はさ、恋愛小説を読んで、それを自分の中で生かせてるの?」
「え」
不意打ちすぎて、ちょっと言葉に詰まる。
「えっと、つまり僕が、恋愛小説を読んで……それを参考にして恋愛するかってこと?」
恋愛か。思わず口ごもってしまう。ちょっと恥ずかしい。
「――うーん、無理だと思うな」
「なんで?」
彼女は本気で不思議そうに、まんまるの目でこちらを見てきた。
「なんでって……」
僕はすぐには答えられなかった。
だって、現実と物語は違う。小説では登場人物のちょっとした仕草や言葉にもちゃんと意味があるけど、現実で同じことをしても、変な空気になることのほうが多いと思う。
さっきだってそうだった。僕が読書の話をしたとき、彼女がちょっと微妙な反応をした気がして。
「……じゃあ、逆に君はどうなのさ、水野さん」
僕は少しむすっとしながら、問い返した。
「私? 私は、恋愛小説も好きだよ。ちゃんと読めば読むほど、自分の恋愛に生かせると思ってる」
彼女はそう言って、ちょっと得意げな顔をした。
「そっか。僕は――」
「君は?」
「……僕は、物語の恋愛と、現実の自分って、まったく別物だって思ってる。自分がそんなドラマチックな展開に巻き込まれるなんて、どうしても想像できなくてさ。恋愛に限らず、異世界転生とかスパイアクションとか、それくらい現実味がないっていうか」
そう言うと、彼女は少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
「なるほどねー? 君のこと、ちょっとは分かってたつもりだったけど……まあ、いっか」
そして、ぽんと話題を変える。
「じゃあさ、君にとって“大切な友達”って誰?」
なんだか変な質問ばっかりだな、と思いながらも、僕は少しだけ考えて答える。
「いないよ」
「え?」
「僕みたいに、本ばかり読んでて無愛想なやつでも、前はクラスの子が『一緒にお昼どう?』とか『今度遊びに行こうよ』とか、声かけてくれたこともあった。でも……違うね。
はっきり言って、友達なんて呼べるものは、僕の知る限り、ひとりもいないね」
そう言い切った僕を、彼女はぽかんと見つめていた。
「へえ。普段からそんなこと考えてるんだ。で、話戻るけど――君はさ、恋愛小説を読んで、それを自分の中で生かせてるの?」
「え」
不意打ちすぎて、ちょっと言葉に詰まる。
「えっと、つまり僕が、恋愛小説を読んで……それを参考にして恋愛するかってこと?」
恋愛か。思わず口ごもってしまう。ちょっと恥ずかしい。
「――うーん、無理だと思うな」
「なんで?」
彼女は本気で不思議そうに、まんまるの目でこちらを見てきた。
「なんでって……」
僕はすぐには答えられなかった。
だって、現実と物語は違う。小説では登場人物のちょっとした仕草や言葉にもちゃんと意味があるけど、現実で同じことをしても、変な空気になることのほうが多いと思う。
さっきだってそうだった。僕が読書の話をしたとき、彼女がちょっと微妙な反応をした気がして。
「……じゃあ、逆に君はどうなのさ、水野さん」
僕は少しむすっとしながら、問い返した。
「私? 私は、恋愛小説も好きだよ。ちゃんと読めば読むほど、自分の恋愛に生かせると思ってる」
彼女はそう言って、ちょっと得意げな顔をした。
「そっか。僕は――」
「君は?」
「……僕は、物語の恋愛と、現実の自分って、まったく別物だって思ってる。自分がそんなドラマチックな展開に巻き込まれるなんて、どうしても想像できなくてさ。恋愛に限らず、異世界転生とかスパイアクションとか、それくらい現実味がないっていうか」
そう言うと、彼女は少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
「なるほどねー? 君のこと、ちょっとは分かってたつもりだったけど……まあ、いっか」
そして、ぽんと話題を変える。
「じゃあさ、君にとって“大切な友達”って誰?」
なんだか変な質問ばっかりだな、と思いながらも、僕は少しだけ考えて答える。
「いないよ」
「え?」
「僕みたいに、本ばかり読んでて無愛想なやつでも、前はクラスの子が『一緒にお昼どう?』とか『今度遊びに行こうよ』とか、声かけてくれたこともあった。でも……違うね。
はっきり言って、友達なんて呼べるものは、僕の知る限り、ひとりもいないね」
そう言い切った僕を、彼女はぽかんと見つめていた。


