「はぁい」
「そんで、アタシはちょっとはっしー借りるわ。作戦会議タイムね」
そう言うと、山本さんは僕の肩をぐいっと引っ張ってゲームコーナーの外まで連れていった。結夏には聞こえないように。
「……で、今日の一限のとき、結夏に何があったの」
山本さんは小声でたずねてきた。
「……今朝のあれ、だよね」
僕は山本さんにざっと説明する。
結夏が授業中にこつぜんと姿を消した、かもしれない、あの出来事を。
「僕もずっと見てたわけじゃないけど、でも、気づいたら抜け出してたんだよ、彼女。僕、ずっと起きてたのに」
「そっか……」
山本さんのようすは、やっぱり、とでも言いたげだった。
「山本さん。前にも、同じようなことがあったんだね? だれも水野さんと遊んだことを覚えてない。それ以外にも、水野さんがとつぜんいなくなってたことがあるんだね」
「……じつは、そうなのよ。授業中に、3回くらいね……。どれも、アンタが言ってたのとほぼ一緒の感覚だった」
「おーい! もしかして私の話してる〜?」
結夏が遠くから呼びかけてきた。
「うん。今度ははっしーとアタシで結夏を集中攻撃しようねって作戦練ってたの」
「ちょっと、ひっどーー!」
「しっしっ! 結夏こそ大崎と作戦会議しなさいな!」
山本さんの声が僕のそばで大きく響いて。さいごに山本さんがささやいた。
「――はっしー、さ。アタシはね。結夏を応援してるんだよ」
「応援? え?」
「事情は知らないけど、あの子、たまにものすごく寂しそうな顔をするの。アタシが踏み入っちゃダメなのかなってくらい、影のある表情をしてるんだ。……アンタには想像つかないよね。はっしー、アンタは結夏を雑に扱うような人じゃない気がする。けど、まだこうして話すようになったばかりだから、アタシがアンタを本当に信頼するのは、きっともっと先になる。――けど、また今度、続きはじっくり聞かせてほしい」
「そうなんだ……? ええと、続きって……?」
「ははっ、そんなの、はっしーと結夏の関係のことにきまってんじゃん。アタシの話はまだまだ終わらないんだからね。そんで、二人のことはぜったいに、最後まで見届けさせてもらうからね」
僕と彼女の関係を見届けるとは? よくわからなかったけど、山本さんは四月に出会ったばかりの結夏を、とても大切に思っていることは伝わった。
そもそも、僕たちの到達する関係というのは、なんだろう……。
それから新しい組み合わせでエアホッケーを1ゲームしたけど、三人ともしっくりこないみたいで、すぐにペアはもとに戻った。
「なんか、いっしょうグダグダだったな」
「うんうん。やっぱこのペアだよね!」
「なー」
それは僕も同じ気持ちだった。
気づけばどっちが多く勝ったかなんてわからないくらい、僕たちは夢中になっていた。
僕たちはけっきょく、このシンプルなゲームをずっと遊び続けた。
「そんで、アタシはちょっとはっしー借りるわ。作戦会議タイムね」
そう言うと、山本さんは僕の肩をぐいっと引っ張ってゲームコーナーの外まで連れていった。結夏には聞こえないように。
「……で、今日の一限のとき、結夏に何があったの」
山本さんは小声でたずねてきた。
「……今朝のあれ、だよね」
僕は山本さんにざっと説明する。
結夏が授業中にこつぜんと姿を消した、かもしれない、あの出来事を。
「僕もずっと見てたわけじゃないけど、でも、気づいたら抜け出してたんだよ、彼女。僕、ずっと起きてたのに」
「そっか……」
山本さんのようすは、やっぱり、とでも言いたげだった。
「山本さん。前にも、同じようなことがあったんだね? だれも水野さんと遊んだことを覚えてない。それ以外にも、水野さんがとつぜんいなくなってたことがあるんだね」
「……じつは、そうなのよ。授業中に、3回くらいね……。どれも、アンタが言ってたのとほぼ一緒の感覚だった」
「おーい! もしかして私の話してる〜?」
結夏が遠くから呼びかけてきた。
「うん。今度ははっしーとアタシで結夏を集中攻撃しようねって作戦練ってたの」
「ちょっと、ひっどーー!」
「しっしっ! 結夏こそ大崎と作戦会議しなさいな!」
山本さんの声が僕のそばで大きく響いて。さいごに山本さんがささやいた。
「――はっしー、さ。アタシはね。結夏を応援してるんだよ」
「応援? え?」
「事情は知らないけど、あの子、たまにものすごく寂しそうな顔をするの。アタシが踏み入っちゃダメなのかなってくらい、影のある表情をしてるんだ。……アンタには想像つかないよね。はっしー、アンタは結夏を雑に扱うような人じゃない気がする。けど、まだこうして話すようになったばかりだから、アタシがアンタを本当に信頼するのは、きっともっと先になる。――けど、また今度、続きはじっくり聞かせてほしい」
「そうなんだ……? ええと、続きって……?」
「ははっ、そんなの、はっしーと結夏の関係のことにきまってんじゃん。アタシの話はまだまだ終わらないんだからね。そんで、二人のことはぜったいに、最後まで見届けさせてもらうからね」
僕と彼女の関係を見届けるとは? よくわからなかったけど、山本さんは四月に出会ったばかりの結夏を、とても大切に思っていることは伝わった。
そもそも、僕たちの到達する関係というのは、なんだろう……。
それから新しい組み合わせでエアホッケーを1ゲームしたけど、三人ともしっくりこないみたいで、すぐにペアはもとに戻った。
「なんか、いっしょうグダグダだったな」
「うんうん。やっぱこのペアだよね!」
「なー」
それは僕も同じ気持ちだった。
気づけばどっちが多く勝ったかなんてわからないくらい、僕たちは夢中になっていた。
僕たちはけっきょく、このシンプルなゲームをずっと遊び続けた。


