地球外生命体の侵略、未来人による過去改変のための時間遡行の理由を解明した私は、次に超能力者だと自称する人物のところへ向かった。何だか順番があべこべになっている気がするが、おそらく気のせいだろう。謎や不可思議を解明するのが我が秘密結社同好会の目的であり、存在理由である。他の不可思議が気になる方はそちらの活躍も見ると、この不可思議への理解が深まるかもしれない。




 さて、待ち合わせ場所は校舎から西に離れること五百メートルのところにあるプールサイド。そのプールサイドにはありがちな、安い素材のビーチパラソルと白い円形テーブルと椅子が複数備わっており、待ち合わせはそこだという。超能力者を自称するのは男であり、同じニ年のしかも転校生だという。長身の男が一人でハワイアンソーダを飲んでいるから、それを目印にしてほしいとのことだった。ちなみに、プールは校舎から向かって東側の遠く離れたところにある。


 私は売店にてメロンソーダを買い、指定された場所へと向かった。私がメロンソーダを買ったのは、それも指示の通りであった。相手が私のことを認識できるようにするためであろう。


 いた。広いプールサイドに男が一人。パラソル下の休息場でで涼んでいる。おそらく彼のことだろう。


「こんにちは。あなたが『超能力者』だとおっしゃる方ですか?」

「どうも。あなたが秘密結社同好会のヘイさんですね。お噂は兼々(かねがね)


 どんな噂だ? 気になる。私は座ってもよいかをジェスチャーで示し、彼はそれを了承し、こう話し始めた。


「では、まずはじめに失礼ですが、あなたは私が『超能力者』です、と話してその通り信用される方ですか?」

「ん? ごめんなさい、なんて?」

「ああ、失礼。わかりやすく言うと、『超能力』を信じますか、という質問です。いえね、普通の方にはまず私が超能力者だとは名乗りません。それは、そうでしょう。初対面で自己紹介がそれではあまりに《《特異》》過ぎます」


 確かに。《《特別異なって》》いる。


「しかし、あなたとは私が超能力者であることを前提にお会いしている。だから、尋ねたのです。超能力者であることを疑ってはいませんか、と。超能力を嘘だと決めて話を進められては私は不愉快ですから」


 なるほど。そういうことか。


「では、正直に。超能力という言葉を文字通り信じて此処に来たわけではありません。しかし、だからといってあなたの言葉をまるっきり嘘だとも思っていない。興味があって、関心があって来ました。これが正直です」


 秘密結社同好会に入部したのも、姫のもとで任務をこなすのも。その先には私の興味関心事に辿り着くから命令を遂行しているのであって、それ以上のことはない。


「なるほど。超能力に関しては疑わしいが、私自身、自称超能力者の転校生である私のことを疑っているわけではない、ということですね」

「はい」 


 自称超能力者と自分で言うのもどうかと思うが。


「わかりました。ありがとうございます。それで構わないと思います。なにせ、私はここでは超能力を証明することができないのですから」

「できない?」

「ええ」

「その、たとえば、たとえが簡単で悪いが、物を宙に浮かせるとか、テレポテーション……つまり瞬間移動させるとか、別の物に変化させるとかはできないのか」

「ええ。できません」


 彼は涼しい顔をしてそう言った。


「何ならできるんだ? 未来予知とかか?」

「いえ、それもできません。ええと、言語化するのが難しいですね」

「わかりやすく、目に見えることではない……とか?」

「そうですね、今この場では見せることができません。ええ、残念ながら。しかし、条件さえ整えば、それは超常的な事象をご覧いただけるかと思いますよ」


 なるほどね。なら……


「込み入って聞くようで申し訳ないが、その条件とはなんですか?」

「それも話せないですね。私の語彙力不足です。言葉で説明しようとすると、どれも誤解を招きそうです」


 埒が明かないな。これでは真相も何も、超能力者である証明することもできない。まあ、今日一日で全て分かるつもりではいなかったが、それにしてもこれでは収穫ゼロで終わってしまう。


「何かエピソードのようなことはないか。実績……とまで行かなくても、こんな出来事があった、とか」

「ああ、それなら」


 そう言って話してくれたのが次の話である。