10-3
「残念だけど、この選択肢も正解じゃない。まだ、足りないかな最重視最重要課題人物さん」
顔をあげると、そこには味楽来玖瑠実がいた。
場所は食堂。長く白い机があり、椅子に座っていて、今は昼過ぎぐらいだろうか外が明るい。がやがやとした雑踏は、懐かしさすら感じる。気がつけば、二人の前にそれぞれパフェが置かれていた。彼女はパフェを食べながら、時折その長いスプーンで私のことを指しながら話を進め始めた。
「私が注文したの。今は三時のおやつの時間だからね」
「ここはーー」
「あら、あなたの方から訪ねてきたんじゃない。私達と同じ方法を使って」
仮タイムトラベル。何度目かの成功でやってきた時空。いまはいつだ?
「ついさっき、秘密結社同好会のあなたにあって話をしたわ。お昼の時間だったかしら」
私に会った? それは初回の三択を意味するのか?
「だから遅かったのよ。少し戻る時間が遅すぎた。あなたのやりたいことをするためには、あなたが私に会う前に行かなきゃ」
私が味楽来氏に会う前? いや、そもそも何で私の状況をこいつは把握しているんだ?
「そんなの簡単よ。私が未来人だから。過去に起きた自分のことぐらいはわかるわよ」
なに? 味楽来玖瑠実は未来から来たばかりのハズじゃ……。だから、その後の出来事がわかるわけなんてーー。
「誰が初めてなんて言ったかしら? これでもう十数回目よ。具体的な数字は教えてあげられないけど」
……え?
「だから何回もあなたの前で麻婆豆腐を食べて、何回もこうしてパフェを食べてるのよ。あなたにとっては初めてかもしれないけど」
そ、そうか。そうなのか。
「私が未来から来た理由。まだ話してなかったでしょ」
確か禁止事項だったはず。今この時点では許されるのか。
「世界が無くなるのを防ぐため。未来のために過去に来て、世界重複によって世界そのものが無くなるのを防ぐため。私だって住んでいる世界が過去のせいで無くなりました、なんて許せないからね。意外と愛着あるのよ、この世界に」
味楽来玖瑠実はそう言うと、「ニシシ」と笑い、パフェを美味しそうにたべるのだった。
※ ※ ※
味楽来玖瑠実は女の子である。小柄で、背が小さく、いわゆるロリっ子で、でも高校一年生で、実年齢は秘密で。未来のメッセージ手段はメールやSNSでもない、もっと別の形をしていてすごく便利らしい。これも秘密。そして味楽来玖瑠実が過去へ来た理由。これも当初は秘密だった。そしてその理由は今話したとおり、今の状況のわたしに会うこと。未来を世界滅亡の危機から救うこと。過去を変えて未来を消し飛ばした私から。
「多分自覚とかないんでしょうけど、でも残念なことにあなたは巨大な時空間移動を引き起こした張本人なの。犯人なの。だから最重視最重要課題人物。最初に会ったときに話したとおりよ」
パフェはすでに半分以上無くなっていた。私のパフェは一口も進んでいないというのに。
「あなたを消せばそれで済むかと思ったんだけど、それじゃ駄目だった。そうしたら今あなたは世界を救うために頑張ってるらしいじゃない。それはいいことよ。協力しなきゃね」
「わ、私は。私は一体何をすればーー」
「ごめん。それは言えない。また巨大な時空間振動でも起こされたら困るからね。でも協力はできる。私の目的とあなたの目的は同じだものね」
彼女は極めて冷静だった。そうだろう。それだけの経験をしてきたのだ。繰り返してきたのは彼女の方だったのだ。私など、その回転の一部に過ぎず、パズルのピースとして当てはめられただけだ。タイムトラベルによる時間輪廻の当事者はまさに彼女で、世界変革の犯人は私で、そして目的は過去改変による未来改変によって滅亡から世界を救うこと。そうなのか。そうだったのか。
私はどこまでも凡人なのだと、思い知らされる。
「それじゃあ、質問ね。あなたの嫌いなものは?」
「? ……ええと、トマトジュース?」
「違う違う。何言ってるの。もっと考えて。はい、あなたの嫌いなものは?」
「……人間」
「正解。他には」
「人間関係」
「正解。結論。つまり、今のあなたは?」
今の私?
「人間、嫌いじゃなかったの?」
他人の日常ほどどうでもいいことはない。説教、昔話、苦労した自分の自慢話。この三つは特に聞きたくない。基本的に人間は嫌いだし、人間関係は苦手というか嫌いだし、つまり他人のことなど興味も関心なければ、好きになることもない。つまり嫌いだ。そうだ。そのとおりだ。では今の私は? 人間関係だらけだ。宇宙人に、超能力者に、未来人。姫様に、ユメに、βやδ世界線の人たち。いつの間にか関係ができていて、そしてその関係が心地よかった。好きだった。自分自信の性癖から恋愛はありえないと言いながらも、婚約者はいる。ああ、確かに矛盾だらけだな。俺の人生。
「世界重複、オーバーライドが発生した理由は二つ。一つは世界線の移動。これはこの時間軸における後の時間において宇宙人との共存を選択したことによるモノ。あなたの言うδでもβでもない。何も起こらない通常ルートでもなく、共存のα世界線。本来存在しない可能性を生み出したあなたによってα世界線は異なる世界を呼び寄せてしまった。もう一つの理由はあなたの問題。人間関係かもしれないし、記憶かもしれないし、行動かもしれない。タイムトラベルによって起きた問題だもの。タイムトラベラーであるあなたに問題があるのが大抵よ」
私の問題。私の引き起こした問題。あるとすれば、それはひとつしかない。
「あっ……体が」
「あら、もう時間ね。パフェは私で食べておくから安心しなさい。それじゃあ、今度は違う形で会えることを楽しみにしてるわ。それまで何度でも頑張ってね、最重視最重要課題人物さん」
「残念だけど、この選択肢も正解じゃない。まだ、足りないかな最重視最重要課題人物さん」
顔をあげると、そこには味楽来玖瑠実がいた。
場所は食堂。長く白い机があり、椅子に座っていて、今は昼過ぎぐらいだろうか外が明るい。がやがやとした雑踏は、懐かしさすら感じる。気がつけば、二人の前にそれぞれパフェが置かれていた。彼女はパフェを食べながら、時折その長いスプーンで私のことを指しながら話を進め始めた。
「私が注文したの。今は三時のおやつの時間だからね」
「ここはーー」
「あら、あなたの方から訪ねてきたんじゃない。私達と同じ方法を使って」
仮タイムトラベル。何度目かの成功でやってきた時空。いまはいつだ?
「ついさっき、秘密結社同好会のあなたにあって話をしたわ。お昼の時間だったかしら」
私に会った? それは初回の三択を意味するのか?
「だから遅かったのよ。少し戻る時間が遅すぎた。あなたのやりたいことをするためには、あなたが私に会う前に行かなきゃ」
私が味楽来氏に会う前? いや、そもそも何で私の状況をこいつは把握しているんだ?
「そんなの簡単よ。私が未来人だから。過去に起きた自分のことぐらいはわかるわよ」
なに? 味楽来玖瑠実は未来から来たばかりのハズじゃ……。だから、その後の出来事がわかるわけなんてーー。
「誰が初めてなんて言ったかしら? これでもう十数回目よ。具体的な数字は教えてあげられないけど」
……え?
「だから何回もあなたの前で麻婆豆腐を食べて、何回もこうしてパフェを食べてるのよ。あなたにとっては初めてかもしれないけど」
そ、そうか。そうなのか。
「私が未来から来た理由。まだ話してなかったでしょ」
確か禁止事項だったはず。今この時点では許されるのか。
「世界が無くなるのを防ぐため。未来のために過去に来て、世界重複によって世界そのものが無くなるのを防ぐため。私だって住んでいる世界が過去のせいで無くなりました、なんて許せないからね。意外と愛着あるのよ、この世界に」
味楽来玖瑠実はそう言うと、「ニシシ」と笑い、パフェを美味しそうにたべるのだった。
※ ※ ※
味楽来玖瑠実は女の子である。小柄で、背が小さく、いわゆるロリっ子で、でも高校一年生で、実年齢は秘密で。未来のメッセージ手段はメールやSNSでもない、もっと別の形をしていてすごく便利らしい。これも秘密。そして味楽来玖瑠実が過去へ来た理由。これも当初は秘密だった。そしてその理由は今話したとおり、今の状況のわたしに会うこと。未来を世界滅亡の危機から救うこと。過去を変えて未来を消し飛ばした私から。
「多分自覚とかないんでしょうけど、でも残念なことにあなたは巨大な時空間移動を引き起こした張本人なの。犯人なの。だから最重視最重要課題人物。最初に会ったときに話したとおりよ」
パフェはすでに半分以上無くなっていた。私のパフェは一口も進んでいないというのに。
「あなたを消せばそれで済むかと思ったんだけど、それじゃ駄目だった。そうしたら今あなたは世界を救うために頑張ってるらしいじゃない。それはいいことよ。協力しなきゃね」
「わ、私は。私は一体何をすればーー」
「ごめん。それは言えない。また巨大な時空間振動でも起こされたら困るからね。でも協力はできる。私の目的とあなたの目的は同じだものね」
彼女は極めて冷静だった。そうだろう。それだけの経験をしてきたのだ。繰り返してきたのは彼女の方だったのだ。私など、その回転の一部に過ぎず、パズルのピースとして当てはめられただけだ。タイムトラベルによる時間輪廻の当事者はまさに彼女で、世界変革の犯人は私で、そして目的は過去改変による未来改変によって滅亡から世界を救うこと。そうなのか。そうだったのか。
私はどこまでも凡人なのだと、思い知らされる。
「それじゃあ、質問ね。あなたの嫌いなものは?」
「? ……ええと、トマトジュース?」
「違う違う。何言ってるの。もっと考えて。はい、あなたの嫌いなものは?」
「……人間」
「正解。他には」
「人間関係」
「正解。結論。つまり、今のあなたは?」
今の私?
「人間、嫌いじゃなかったの?」
他人の日常ほどどうでもいいことはない。説教、昔話、苦労した自分の自慢話。この三つは特に聞きたくない。基本的に人間は嫌いだし、人間関係は苦手というか嫌いだし、つまり他人のことなど興味も関心なければ、好きになることもない。つまり嫌いだ。そうだ。そのとおりだ。では今の私は? 人間関係だらけだ。宇宙人に、超能力者に、未来人。姫様に、ユメに、βやδ世界線の人たち。いつの間にか関係ができていて、そしてその関係が心地よかった。好きだった。自分自信の性癖から恋愛はありえないと言いながらも、婚約者はいる。ああ、確かに矛盾だらけだな。俺の人生。
「世界重複、オーバーライドが発生した理由は二つ。一つは世界線の移動。これはこの時間軸における後の時間において宇宙人との共存を選択したことによるモノ。あなたの言うδでもβでもない。何も起こらない通常ルートでもなく、共存のα世界線。本来存在しない可能性を生み出したあなたによってα世界線は異なる世界を呼び寄せてしまった。もう一つの理由はあなたの問題。人間関係かもしれないし、記憶かもしれないし、行動かもしれない。タイムトラベルによって起きた問題だもの。タイムトラベラーであるあなたに問題があるのが大抵よ」
私の問題。私の引き起こした問題。あるとすれば、それはひとつしかない。
「あっ……体が」
「あら、もう時間ね。パフェは私で食べておくから安心しなさい。それじゃあ、今度は違う形で会えることを楽しみにしてるわ。それまで何度でも頑張ってね、最重視最重要課題人物さん」