石を使うことでできることは二つ。

 一つは空間移動。これは地球外知的生命体が行った方法。観覧車を目印に、彼らの星から地球へと移動してきた。


 もう一つは時間移動。これは夢野根底や味楽来玖瑠実が行った方法。観覧車を目印に、場所を同じくして時間だけを移動させる。タイムトラベル。


 そしてこれら法則の例外。観覧車がない場合と、目印を使わない場合。これらの場合、時間と空間の両方が定まらないので、その双方が変数となり時間も場所もランダムになる。α世界における姫様が使用し、β世界の一年後の教室へと私が飛ばされたように。


「これを使えば戻れるんだな」

「左様でございます、ヘイ様。元の世界のヨウヘイ様はもちろん超能力者ではないので、使用にはわたくしがご助力する形になりますが」

「そうか」


 この世界に来た理由。それが世界の真実を知ることで敵を倒す手段を得るためだとしたらそれは失敗に終わっている。私は宇宙人の倒し方なんて知らない。この世界にあったとしても、手に入れていない。いや、たとえ手にしていたとしても実行できないだろう。だから結局は失敗である。姫様が私を時間と空間を超えて、世界線を超えるほどに飛ばした意味はなかった、徒労だったのだと。しかし。


「宇宙人を倒す方法はわからないけど、未来を変える手段は分かったかもしれないな」 

「さすがです、ヘイ様。良い選択を。良い未来を、どの世界でも私はお祈りしております」

「ありがとう。ユメ」


 私は石を二つ、予備と使う用とポケットに入れた。ユメが胸に石を当て、祈るように目を閉じると光が生まれた。そして私は姫様に最初飛ばされたときと同じように時間移動を始めた。今度は意志を持って。目的地を定めて。



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