枝桜心。
姓をエダザクラと読み、名をシンと読む。
自称超能力者として私が出会った、調査対象者三人の内の一人。しかし、私はこの件に関して聞き取りの結果報告はしたが、いったい何のための調査だったのかを未だ知らない。名前だってユメから聞くまで知らなかった。また、その時姫と一緒にいたブラウさんとの関係、件との関連性も一切聞いていない。聞きそびれた。聞く前に時間を超えてしまった。しまった。
しかも、更にである。想像でしかないが、一年弱で男性から女性に性変更をするというのは、相当な決断を下す、何らかの経緯がそこにはあったに違いない。それとも超能力者だと性別が変わるのか? 一年単位で変わるのか? 変えなきゃいけないのか? 超能力以上に不可思議である。ああ、そして残念なことに。非情なことに。私は、それと同時に、猛烈かつ非常に興味が湧いてしまっている自分が、そこには確かに居たのだった。
※ ※ ※
「元々女性?」
「ええ、仰る通りです。私は女性として生まれ、女性として生きてきました。容姿端麗とまではいきませんが、それなりに女性らしいかと思っていたのですが……どこかおかしかったでしょうか?」
「ああ、いや。すみません。誰かと勘違いしてしまったのかも知れません。申し訳ございませんでした」
私は深く頭を下げた。
「いえいえ、とんでも無い。そこまでされなくても。どうかお顔をあげてください。勘違いは誰でもあることですし」
「いえ、しかしーー」
彼女は背の高い容姿端麗な女性だった。可愛らしいよりは、美しい・綺麗が似合う女性。背の高いという点においては確かに類似しており、私の謝罪に困惑の表情を浮かべたその面影にも、私が以前“”彼“”として出会った時の雰囲気そのものであることは間違いない。彼女は彼だ。他人ではなく、同一人物であろう。
兄弟姉妹の可能性も考えられたが、話からしてその線も薄そうである。枝桜氏と話しながらこっそり、ユメに後で探るようにメッセージアプリで指示を出したが、たぶんユメの表情からしても結果が変わることはないだろうな。そうすると、やはり私がおかしいことになる。私が枝桜氏を男性として出会ったという事実はありえないことで、本当に勘違いして見た幻だったということだろうか。
「では、すみません。本題に入ります枝桜さん」
場所は共用スペース、自動販売機がずらりと並んだ前。私と夢野、ブラウさんと枝桜氏の四人がバスの待合室のようなイスに腰を掛けている。枝桜氏のことは夢野が湯上がりを待ち伏せていた。厳密にはここは女子寮ではない。
「私はこちらのブラウ様より友人が“”苛められている“”可能性を聞き、こちらのヨウヘイ様と共にお調べしておりました。そして、結果から申し上げますと犯人は枝桜さん。あなたと言うことになります。証拠は抑えてあります。ご覧になりますか?」
「いや、」
彼女は夢野がノートパソコンを開こうとするのを抑えて言った。
「彼女の言うとおりです。私が犯人で間違いありません。彼女にはーー味楽来玖瑠実さんには申し訳ないことをしました」
「なんで! こんなことーー!」
感情的になるのはブラウさん。
枝桜氏はブラウさんも手でやや、と抑える。冷静に、と。
「その気持ちは当たり前の感情でしょう。一番ぶつけたいのは本人でしょうが、友人であるあなたもそれは同じであることはとても想像できます。本当にごめんなさい。だけど、こうするしかなかった。言い訳にもなりませんし、許しを請う懺悔を述べるつもりもありませんが、その“”いきさつ“”だけでも聞いていただけないでしょうか」
「ーーお願いします」
ブラウさんは小さい体を震わせ、涙を浮かべながらそう言い、それを見た枝桜氏が理由について話し始めた。最初に彼女は、こう人物の名前をあげた。
「ことの始まりは、桃川姫子さんから始まります」
姓をエダザクラと読み、名をシンと読む。
自称超能力者として私が出会った、調査対象者三人の内の一人。しかし、私はこの件に関して聞き取りの結果報告はしたが、いったい何のための調査だったのかを未だ知らない。名前だってユメから聞くまで知らなかった。また、その時姫と一緒にいたブラウさんとの関係、件との関連性も一切聞いていない。聞きそびれた。聞く前に時間を超えてしまった。しまった。
しかも、更にである。想像でしかないが、一年弱で男性から女性に性変更をするというのは、相当な決断を下す、何らかの経緯がそこにはあったに違いない。それとも超能力者だと性別が変わるのか? 一年単位で変わるのか? 変えなきゃいけないのか? 超能力以上に不可思議である。ああ、そして残念なことに。非情なことに。私は、それと同時に、猛烈かつ非常に興味が湧いてしまっている自分が、そこには確かに居たのだった。
※ ※ ※
「元々女性?」
「ええ、仰る通りです。私は女性として生まれ、女性として生きてきました。容姿端麗とまではいきませんが、それなりに女性らしいかと思っていたのですが……どこかおかしかったでしょうか?」
「ああ、いや。すみません。誰かと勘違いしてしまったのかも知れません。申し訳ございませんでした」
私は深く頭を下げた。
「いえいえ、とんでも無い。そこまでされなくても。どうかお顔をあげてください。勘違いは誰でもあることですし」
「いえ、しかしーー」
彼女は背の高い容姿端麗な女性だった。可愛らしいよりは、美しい・綺麗が似合う女性。背の高いという点においては確かに類似しており、私の謝罪に困惑の表情を浮かべたその面影にも、私が以前“”彼“”として出会った時の雰囲気そのものであることは間違いない。彼女は彼だ。他人ではなく、同一人物であろう。
兄弟姉妹の可能性も考えられたが、話からしてその線も薄そうである。枝桜氏と話しながらこっそり、ユメに後で探るようにメッセージアプリで指示を出したが、たぶんユメの表情からしても結果が変わることはないだろうな。そうすると、やはり私がおかしいことになる。私が枝桜氏を男性として出会ったという事実はありえないことで、本当に勘違いして見た幻だったということだろうか。
「では、すみません。本題に入ります枝桜さん」
場所は共用スペース、自動販売機がずらりと並んだ前。私と夢野、ブラウさんと枝桜氏の四人がバスの待合室のようなイスに腰を掛けている。枝桜氏のことは夢野が湯上がりを待ち伏せていた。厳密にはここは女子寮ではない。
「私はこちらのブラウ様より友人が“”苛められている“”可能性を聞き、こちらのヨウヘイ様と共にお調べしておりました。そして、結果から申し上げますと犯人は枝桜さん。あなたと言うことになります。証拠は抑えてあります。ご覧になりますか?」
「いや、」
彼女は夢野がノートパソコンを開こうとするのを抑えて言った。
「彼女の言うとおりです。私が犯人で間違いありません。彼女にはーー味楽来玖瑠実さんには申し訳ないことをしました」
「なんで! こんなことーー!」
感情的になるのはブラウさん。
枝桜氏はブラウさんも手でやや、と抑える。冷静に、と。
「その気持ちは当たり前の感情でしょう。一番ぶつけたいのは本人でしょうが、友人であるあなたもそれは同じであることはとても想像できます。本当にごめんなさい。だけど、こうするしかなかった。言い訳にもなりませんし、許しを請う懺悔を述べるつもりもありませんが、その“”いきさつ“”だけでも聞いていただけないでしょうか」
「ーーお願いします」
ブラウさんは小さい体を震わせ、涙を浮かべながらそう言い、それを見た枝桜氏が理由について話し始めた。最初に彼女は、こう人物の名前をあげた。
「ことの始まりは、桃川姫子さんから始まります」