「お久しぶりです。ヘイさん」
全身より長く、白より青い色の上を靡かせながら、今日も霊体の姿で現れた地球外生命体、エデン・レイ。胸は限りなくないが、貧乳はステータスなのでヨシ。Tシャツ一枚の姿というのは、以前と……違う?
「今日はTシャツなんですね」
「地球は暑いので」
「なるほど」
確か、氷の大地出身だから地球は暑くて滞在の限界時間があるんだっけな。
「それに、その胸がーー」
「ああ、これは特に意味はないのですが。私達は人類ではありませんし、人間でもありませんから。ヒトガタの姿であるのは、その方が何かと都合が良いからです」
……? なにの話だ。なにの都合がよいのだ?
「え、ええと。レイさんでしたね。その、あまり時間もないと思うので、早速。何を知りたいのですか?」
「一番偉い人は誰ですか?」
「偉い人?」
「地球を侵略したいと思います。それには一番偉い人に会うのが一番ハヤイ」
すると彼女は武器らしきものを取り出し、私に向けてきたのだった。
地球を侵略する。
それを日本語に不慣れな宇宙人の言葉の綾だと思ったのは思い込みでしかなく、文字通り彼女は侵略しに来たのだった。
※ ※ ※
私に抵抗する意志がなく、また、戦うつもりもないこと。レイに対する興味関心が会って逢いに来ていたこと。地球の一番は事実上存在せず、各国ごとの長はいるということ。できることなら穏便に、という願い虚しく彼女は聞き出すことだけ聞き出し、インターネットを通じて手に入れていた情報と照らし合わせながらその真偽を確かめていた。SNS、メタバース、ネットニュースに、衛星通信から入手した地上波放送。データというデータを、アナログからデジタルまで網羅し、更に私という地球人に接触して裏取りまでしている。自分たちの情報は小出しにし、相手の情報の信憑性を精査。隙がない。
「なるほど、言葉に偽りはなさそうですね。ヘイさん、あなたは武装せずに日々暮らし、そして敵対された今でも対抗する術はない、と」
「するつもりもないよ、なあ、頼むからその刃物と銃が一体化した武器を下げてくれ。この通り、何もしないから」
もう、こんなことになるとは。嫌な汗しか出ない。今すぐにでも逃げ出したい。
「情報に嘘も無さそうだネ……。2020年、77億9500万人、2030年、85億4800万人、2040年、91億9100万人、2050年、97億3500万人か……なるほどね、予測まで。5年単位でも出ている。賢いね。利口だ。平均寿命が……ふむふむ……だとすると……65歳以上の人口が1950年5.1パーセントに対して2030年で11.7パーセントにまで向上。人口増加に対して死者は医療の向上かな。君たちの言う大国、たとえばアメリカでは379万人うまれて、281万人死んでいるが、ここ日本では86万人生まれて138万死んでる。なるほどね」
減ってるね、人間。
「いや、世界的には増えているのカ。出生率は1990年の27パーセントぐらいから2030年で16パーセントの予測かぁ。この間の疫病はまだ集計中みたいだけど、ふむふむなるほどね。自殺者のほうが戦争や病死より多いとは。いやはや、何だこれは。面白い。君たちの言語で言うところの“”興味深い“”出来事ダネ。ふふふ。まったく、何がそんなに命を絶つまでにするんだろうね。ほんとうに興味深い。うまくすれば、掌握するのに役立ちそうだ。そうなると、軍に属する人数と、ゲリラ的にでも武器を取って戦えそうな数は……。なるほどね、勉強になるなぁ! 人間」
殺傷能力を二倍以上に備えた遠近両用オトクタイプな武器はジリジリと私へ近づいていた。
アブラ汗。
冷や汗。
身体を極限まで縮こませることで何とか接触を回避しようとする私と無情な得物を進ませる相手。刃先が当たる。刺さる。血が滴る。ああ、どうなってしまうのだ。死んでしまうのか? このまま? 死ぬってなんだ? 敵って何? 宇宙人? 地球外生命体? ああ、もう駄目。
そう目を閉じたときであった。
迫りくる殺意が無くなった。
目を開けると、見えたのはさながら仮面○イダーの様にキックを放っている女性、と、その女性のスカートと、その、中のピンクフラワーな下着!
見事に蹴りが決まり、私とレイの間に颯爽と現れた彼女は、ああ、見間違えることのない。その姫らしく、可憐で、花蓮で、花恋で、火憐かつ香恋なお嬢様。姫の中の姫。見事なツインカールテールとその笑み。
我が部長姫川桃子様である。
「まったく何してんのよ、ヘイ。秘密結社同好会の一員なら必殺技の一つぐらい持っておきなさい!」
「姫様!」
私にとって驚きであり、同時に喜びで、そして何より泣いていた。声は出さずに、静かに。なぜだろう。なぜかすごく長い時間この時を待っていた気がする。何度も何度も、この時を望んでいた気がする。
「さて、と。ヘイの言葉が正しければ、必要なのは私ともう一人らしいわね。さぁそれ、行きなさい!」
姫様が何か取り出したかと思うと、そこからまた一人女性が現れて、そしてそのままレイを押し倒した。
物理的に。
そしてもう一度押し倒した。
比喩的に。
「さて、次はヘイの出番よ!」
「えっ……な、何をーー」
言葉終わらぬままに私は吸い込まれた。何に? わからない。光か、空間か、はたまたインチキなマジックか、神の奇蹟か。いずれでもないかもしれないし、どれかが正解かもしれない。分かっているのは、姫様が手にしていた“”モノ“”が関係しているということ。ただ、それだけを忘れないようにして私は旅立った。
「ヘイならできる。なんてったって、このルートが今ここに存在するんですもの。それが何よりの証拠よ。さあ、頑張って頂戴。そして、ーー必ず帰ってきて、ヨウヘイ」
全身より長く、白より青い色の上を靡かせながら、今日も霊体の姿で現れた地球外生命体、エデン・レイ。胸は限りなくないが、貧乳はステータスなのでヨシ。Tシャツ一枚の姿というのは、以前と……違う?
「今日はTシャツなんですね」
「地球は暑いので」
「なるほど」
確か、氷の大地出身だから地球は暑くて滞在の限界時間があるんだっけな。
「それに、その胸がーー」
「ああ、これは特に意味はないのですが。私達は人類ではありませんし、人間でもありませんから。ヒトガタの姿であるのは、その方が何かと都合が良いからです」
……? なにの話だ。なにの都合がよいのだ?
「え、ええと。レイさんでしたね。その、あまり時間もないと思うので、早速。何を知りたいのですか?」
「一番偉い人は誰ですか?」
「偉い人?」
「地球を侵略したいと思います。それには一番偉い人に会うのが一番ハヤイ」
すると彼女は武器らしきものを取り出し、私に向けてきたのだった。
地球を侵略する。
それを日本語に不慣れな宇宙人の言葉の綾だと思ったのは思い込みでしかなく、文字通り彼女は侵略しに来たのだった。
※ ※ ※
私に抵抗する意志がなく、また、戦うつもりもないこと。レイに対する興味関心が会って逢いに来ていたこと。地球の一番は事実上存在せず、各国ごとの長はいるということ。できることなら穏便に、という願い虚しく彼女は聞き出すことだけ聞き出し、インターネットを通じて手に入れていた情報と照らし合わせながらその真偽を確かめていた。SNS、メタバース、ネットニュースに、衛星通信から入手した地上波放送。データというデータを、アナログからデジタルまで網羅し、更に私という地球人に接触して裏取りまでしている。自分たちの情報は小出しにし、相手の情報の信憑性を精査。隙がない。
「なるほど、言葉に偽りはなさそうですね。ヘイさん、あなたは武装せずに日々暮らし、そして敵対された今でも対抗する術はない、と」
「するつもりもないよ、なあ、頼むからその刃物と銃が一体化した武器を下げてくれ。この通り、何もしないから」
もう、こんなことになるとは。嫌な汗しか出ない。今すぐにでも逃げ出したい。
「情報に嘘も無さそうだネ……。2020年、77億9500万人、2030年、85億4800万人、2040年、91億9100万人、2050年、97億3500万人か……なるほどね、予測まで。5年単位でも出ている。賢いね。利口だ。平均寿命が……ふむふむ……だとすると……65歳以上の人口が1950年5.1パーセントに対して2030年で11.7パーセントにまで向上。人口増加に対して死者は医療の向上かな。君たちの言う大国、たとえばアメリカでは379万人うまれて、281万人死んでいるが、ここ日本では86万人生まれて138万死んでる。なるほどね」
減ってるね、人間。
「いや、世界的には増えているのカ。出生率は1990年の27パーセントぐらいから2030年で16パーセントの予測かぁ。この間の疫病はまだ集計中みたいだけど、ふむふむなるほどね。自殺者のほうが戦争や病死より多いとは。いやはや、何だこれは。面白い。君たちの言語で言うところの“”興味深い“”出来事ダネ。ふふふ。まったく、何がそんなに命を絶つまでにするんだろうね。ほんとうに興味深い。うまくすれば、掌握するのに役立ちそうだ。そうなると、軍に属する人数と、ゲリラ的にでも武器を取って戦えそうな数は……。なるほどね、勉強になるなぁ! 人間」
殺傷能力を二倍以上に備えた遠近両用オトクタイプな武器はジリジリと私へ近づいていた。
アブラ汗。
冷や汗。
身体を極限まで縮こませることで何とか接触を回避しようとする私と無情な得物を進ませる相手。刃先が当たる。刺さる。血が滴る。ああ、どうなってしまうのだ。死んでしまうのか? このまま? 死ぬってなんだ? 敵って何? 宇宙人? 地球外生命体? ああ、もう駄目。
そう目を閉じたときであった。
迫りくる殺意が無くなった。
目を開けると、見えたのはさながら仮面○イダーの様にキックを放っている女性、と、その女性のスカートと、その、中のピンクフラワーな下着!
見事に蹴りが決まり、私とレイの間に颯爽と現れた彼女は、ああ、見間違えることのない。その姫らしく、可憐で、花蓮で、花恋で、火憐かつ香恋なお嬢様。姫の中の姫。見事なツインカールテールとその笑み。
我が部長姫川桃子様である。
「まったく何してんのよ、ヘイ。秘密結社同好会の一員なら必殺技の一つぐらい持っておきなさい!」
「姫様!」
私にとって驚きであり、同時に喜びで、そして何より泣いていた。声は出さずに、静かに。なぜだろう。なぜかすごく長い時間この時を待っていた気がする。何度も何度も、この時を望んでいた気がする。
「さて、と。ヘイの言葉が正しければ、必要なのは私ともう一人らしいわね。さぁそれ、行きなさい!」
姫様が何か取り出したかと思うと、そこからまた一人女性が現れて、そしてそのままレイを押し倒した。
物理的に。
そしてもう一度押し倒した。
比喩的に。
「さて、次はヘイの出番よ!」
「えっ……な、何をーー」
言葉終わらぬままに私は吸い込まれた。何に? わからない。光か、空間か、はたまたインチキなマジックか、神の奇蹟か。いずれでもないかもしれないし、どれかが正解かもしれない。分かっているのは、姫様が手にしていた“”モノ“”が関係しているということ。ただ、それだけを忘れないようにして私は旅立った。
「ヘイならできる。なんてったって、このルートが今ここに存在するんですもの。それが何よりの証拠よ。さあ、頑張って頂戴。そして、ーー必ず帰ってきて、ヨウヘイ」