1人になった僕は、ベッドの上で希空からのプレゼントを見つめていた。

 シルクの袋に包まれていて、触り心地がすべすべしていて気持ちがいい。

 袋の上には、一枚の手紙が貼り付けられてある。小さく端の方に、『袋開ける前に手紙から』と書かれている。

 袋にテープ付されている手紙を破けないように、ゆっくり丁寧に外す。

「希空、読ませてもらうね」

 どこかで僕を見守っているであろう、見えない希空に語りかけ、手紙を開いていく。

 丸まった可愛らしい字が連なっているのが、僕の目に映る。



『私の大好きなお日様へ

 この手紙をあなたが読んでいる時、私はあなたの側にはもういないでしょう。

 きっと、あなたのことを天国。いや、青く澄み渡る大空から見ているかもね。

 私の最後は、どんなだったのかな。太陽に見守られながら、深い眠りにつけたならいいけど...

 そうであってほしいと切実に思うよ。泣いてる顔をしている太陽が容易に想像できちゃう。

 私はね、太陽に出会えて本当に良かった。太陽が私の世界を彩って、明日へと繋がる未来への希望の道筋を示してくれたんだよ。

 もし、出会えていなかったら私は死ぬまでずっと、暗い中を彷徨っていたかもしれないや。

 私たちの出会いは、なかなかおかしな出会いだったね。

 保健室に来た太陽が、私のことを『お化け』って言った時は、驚いたし失礼なやつだと思ったよ。

 今となってはいい思い出だけど、あの時は結構やばいやつ認定してたんだからね。

 懐かしいな。出会って1年も経っていないけど、なんかずっと前から私たちは、出会っていた気がする。

 断言はできないんだけど、私の初恋だった子が太陽に似てたんだよね。

 もしかして、その子だったりする?場所とか年齢は覚えてないの。ほんっとごめん!

 なんとなく、雰囲気も似ているし、確かあの子もコスモスのことを『あきざくら』って言ってたんだよね。

 コスモスのことを『秋桜』って呼ぶ人は、そうそういないから太陽の口から出て来た時は、つい驚いちゃった。

 今手紙を書いていて思ったけど、本当にあの時の初恋の子だったり...とかある?

 もし、昔に出会っていたなら、私たちは引き寄せられた運命だったのかもしれないね。

 そうだったら、嬉しいな。次生まれてくる時も、引き合わせてくれないかな〜。

 お願いします! 神様〜!

 っとまぁ、ふざけるのはここまでにしておくよ。

 ねぇ、太陽。元気ですか? しっかりご飯は食べていますか? 

 私は君のことが心配でたまらないです。太陽を置いてこの世を去ってしまったのは、とても心が苦しいよ。

 去るのも辛いけど、残されてしまった方も辛いもんね。

 でも、太陽なら乗り越えられるよね。だって、私が愛した人はそんな柔な男じゃないでしょ?

 泣かないで。もう太陽は私のことで、散々泣いてくれたんでしょ?

 見えなくてもわかるよ。私が太陽の立場なら絶対に泣いてると思うから。

 無理難題かもしれないけど、笑ってほしいな。私は、あなたの太陽みたいに照らしてくれる笑顔が大好きだったから。

 どんなに辛くても、あなたの顔を思い出すだけで私は強くなれるの。

 だから、笑っていて...私が好きだった笑顔で。

 まだまだ書きたいことがたくさんあるんだけど、ちょっと疲れて来たからこの辺にしとくね。

 最後に...今、太陽の手には袋があると思います。

 ひとつは私から太陽へのプレゼント。もうひとつは、太陽へのお願い。そして、私の夢。

 前に太陽が話していた案を頂いちゃった。できるなら、あのコスモス畑の丘の上から飛ばしてほしい。

 コスモス畑の少し先には、崖があって青く染まる海が広がっているから、そこに私を飛ばして。

 これで、無事私の夢は果たされる。太陽に果たせてもらうなんて、私は本当に幸せ者だ〜。

 勝手に叶ってることになってるけど、太陽なら叶えてくれるって信じてるよ。

 それじゃ、よろしく!

 さよならは言わないよ。永遠の別れになると、私は思っていないからね。

 またね、太陽!またあのコスモス畑の丘であなたと会えることを願っています。

 苗字お借りしました。最後くらいいいよね?夜瀬っていい響き。

 太陽、愛してるよ。おやすみなさい。

 夜瀬希空より』