「私とお兄ちゃんの霊感が強い理由はね……」

 言葉に詰まらせながら、表情を強張らせた。「どうしたの?」そう尋ねようした次の瞬間。

 コンコン――。
 部屋のドアが何者かにノックされた。
 不意打ちだったので、びくっと肩が震える。
 杏子ちゃんも同様だったようで体をこわばらせた。そればかりか杏子ちゃんの表情は怯えているように見えた。


「杏子ー? 起きてる?」

「……ママ」

 ドアの外側から優し気な声が聞こえてきた。来衣先輩と杏子ちゃんのお母さんのようだ。
 なぜか杏子ちゃんの顔は蒼白していく。

「未蘭さん……? 私とお兄ちゃんの霊感が強い理由はね……お母さんが凄腕の霊媒師なの」

「え、」

 瞬時に脳裏に柊の言葉が浮かんできた。「霊媒師に消された守護霊代行がいる」と話していたことを思い出した。杏子ちゃんのお母さんが霊媒師なら、存在が知られたら消されてしまうかもしれない。それゆえに恐怖で背筋が凍るような身震いがした。

「未蘭さん、壁抜けられるよね? お母さんにバレると厄介だから……外出てて?」

「う、うん」
 
 慌てて立ち上がった。そして杏子ちゃんに言われた通り壁をスッと通り抜けて外に出た。

 振り返ると2人の話し声がわずかに聞こえる気がする。さすがに内容は聞き取れない。身の危険を感じたので、来衣先輩の家から少し離れて待つことにした。