僕は足がもつれてバランスを崩すと、床に倒れ込んだ。そして、その拍子に思い切り膝を家具の角に打ち付けた。

「……え?」

間の抜けた一文字を発しながら、起きあがろうとした僕は自身の足元を見て、息を呑んだ。


「嘘だろっ! そ、そんな……」

──その瞬間、僕は全てを理解した。レイナのこと、父のこと、母のこと、そして……僕自身のこと。

「だだだ、大丈、ぶ……レ、オオ……オ」

「……! レイナ?!」

僕が転んだ音で目を覚ましたレイナがゆっくりと起き上がると、僕の方を見て、機械音をギコギコ立てながら手を伸ばしている。

僕は赤い液体が流れ出ている足を引き摺りながら、ゆっくりとレイナへ近づいた。

「大丈夫だよ、レイ、ナ」

僕はレイナのほとんど冷たい手を取るとベッドに腰かけた。

「わた、し……幸せだっ……いつもレオと、とと、いっ……しょ」

「うん、僕も……レイナと一緒……すごせて……レイナの愛情を貰って……知って……幸せだだ……たたた」

僕は、僕自身も冷たくなってきている身体をなんとか動かしながら、両手でレイナをそっと抱きしめた。

僕の頭の中にカチカチと音が響いて、あちこちの回路が端から順番に停止していく。

転んだことによって、僕の膝からは、燃料の赤い液体が流れ出していて、足元はすでに燃料の水溜まりができていた。