それからまた幾日かの日々が過ぎて、僕はベッドの中で夢の世界にいた。

父、母、レイナと四人で暮らしていたときの懐かしい記憶にこれは夢の中だと分かっていながら、僕は嬉しくて幸せでたまらない。

ずっと、ずっとこんな日が続いてくれたら良かったのに……



──カチカチカチカチ……カチ、カチ

ふいに、どこかから不規則な時計の針の音がする。前まではこんな音はしなかった気がするのは気のせいだろうか。僕はふわふわとした感覚をそのままに現実に引き戻された。

(ん? リビングの時計も電池切れか?)

僕は目を擦るとベッドから起き上がった。そしてすぐに隣のベッドを慌ててみる。いつもは僕より先におきて台所に立っているはずのレイナがまだベッドにいることに僕は心臓が止まりそうになった。

「レイナっ……」

僕はすぐレイナに駆け寄った。すると、レイナは固く目を閉じたまま、静かな呼吸を繰り返している。

「あぁ……良かった……」

そして僕は何気なくレイナの頬にそっと触れると、目を見開いた

「そんなっ! 体温が冷たくなっていってる……もう時間がないんだ……」

レイナはAIだ。でもレイナ自身は自分がAIであることを知らないのだ。僕は掌をぎゅっと握り締めると、台所へと向かった。

もうレイナが朝、自動的に眠りから覚醒するほどの燃料が残ってないこと、レイナとの別れがもうすぐそこまできていることを悟った僕は、自ら台所に立ち、レイナの好きな卵とにんじんのスープを作った。

(少しでも……いつもと変わらない日常を……最期の一日までレイナと過ごしたい)

僕は、スープを二人分よそうと、レイナを起こしにいく。

その時だった。

──ガタガタッ、ドタッ!!

「っ……」