「……まずいな……急がないと」

僕は掠れた声で呟くとレイナの手首のカバーを外し、レイナの起動ボタンである、鼻をちょんと押した。

しばらく糸巻きのように眼球をぐるぐる回してからキチンと瞳を真っ直ぐに向けるとレイナがにっこり笑った。

「夜ごはん、いただきます」

「……違うよ、レイナ。朝ごはんだよ」

「あ、私……たら……」

レイナがチャームポイントのエクボを見せながら歯を見せて笑った。僕は食事をようやく口に運びながら、チェストの上の古い黄ばんだ写真に目をやった。

そこには、片眼鏡をつけた発明家の父とシステムエンジニアだった母が寄り添って微笑んでいる。

(父さん達が死んでから……随分たったな)

母が交通事故で死んで、そのあと父は後をおうように病気でこの世を去った。

──『レオ、お前は父さんの誇りだ……レイナを頼む』

そういって父は涙を流しながら、僕とレイナの手を握ったまま安らかに眠ったのが、つい昨日のことのように記憶に蘇る。