「……理子ちゃん」

「……!」

いつもより低いトーンの私の声に理子が驚いたように振り返る。

私はそのまま、理子に微笑むと後ろから、理子の肩をこれでもかと強く引っ張った。

「えっ! きゃっ……」

理子の体は宙を舞い、面白いほどに階段下まで綺麗に転げ落ちると、赤い液体を口から吐き出した。

私はそれをみて、すぐに体を震わせた。


勿論──可笑しくて。


「早速ひとりおしまいね……ばいばい」

私は鼻歌混じりに、校舎四階のトイレへと迷わず向かっていく。

トイレの入り口には、すでに痺れをきらした久美と香織が仁王立ちをして待っていた。

「何やってたのよ!グズ!」

「遅いのよ!これだから陰キャのブスは」

いつものように浴びせられる罵声が、今日が最後だと思うとなんだか心地いい。私は唇をゆっくり開いた。

「ねぇ……」

私の声に二人が醜く顔を歪める。

「は?何よ、さっさとトイレに来なさいよ!」

「そうよ!私らストレス溜まってんの!」

私は口元を緩ませると、彼女たちを無視して屋上へ向かって駆け出した。

「ここまでおいでっ」