①物語の設定・主要キャラクターの説明

・物語の世界観

魔法・魔術などの超常が存在する世界。
かつては『魔王』が存在し、建国の六賢人がそれを打ち倒したとされている。
六賢人によって建国されたシュルツ国が舞台。
シュルツ国は長く栄華が続き、続きすぎたせいで腐った国になっている(後々明かされるが、これは魔王の侵略のせいもあった)
能力の高い罪人などを国が管理して売買する制度がある。

・主要登場人物のキャラクター紹介


●ゼッテ
国の暗部を引き受ける部署に所属する男。20代。
普段は市民に擬態している。
国の後ろ暗いあれこれをよく見せられているため、心がすさんでいる。
そんな日々が続いた果てに、やけになって国が管理する一等高い罪人のアキラを買った。
生きるため、職務には忠実だが、本当にこれでいいのかと葛藤する心もある。
腐った世には辟易しているし諦観しているが、この時代に希少なほどのお人好し(わかりやすくはない)なので、よく厄介ごとに巻き込まれる。
アキラを買ったことで運命が狂い、後に叛逆の英雄と称えられることになる。
実は王の庶子。

●アキラ(晶)
罪人として国に管理され売られていた人物。年齢不詳、性別不詳気味に見えるが女。
実は建国の六賢人に拾われた異世界人。界を越えたことで不老になっている。
かつての仲間(六賢人)に「自分たちの作った国が腐ったら、また打ち倒してほしい」と言われたため、義理で国家転覆を企んだものの失敗し、国の管理する罪人になっていた。
「やっぱり旗頭がいないとなんともならないものだね」とのこと。
界を越えたことでとんでもない量の魔力を得て、建国の六賢人の魔法使いにすべての知識を与えられたため、賢人ではないが賢者ではある。
国につけられた隷属印は、物語の途中からは消せるけど消していない。対外的にゼッテの犬だとわかりやすいので。


②冒頭部分のプロット

●1話

仕事に嫌気がさして前後不覚になるまで酔ったゼッテがアキラを買う。
二日酔いに沈むゼッテを無詠唱で癒やすアキラ(無詠唱は失伝したとされている)。
驚くゼッテにさらりとどう考えても嘘だろな自分の身の上を明かすアキラだが、なぜ罪人になったかはのらりくらりはぐらかす。
「私は役に立つ犬だよ、ご主人。追々証明していこう」
なんだかあやしさは感じつつも、受け入れてしまうゼッテ(アキラの魔法の効果)
なにができるんだと聞くと「『魔法』でなら大抵のことはできるんだけど、『魔術』は学習しないと難しいかな」などと言い出す。
(『魔法』は大量の魔力を保有していないと使えないため今はほとんど使い手がいない/『魔術』は陣や印を使い、世界の魔力を借りて行使する、比較的新しい技術)
「魔法が使えて魔術が使えないなんて何者なんだよ、そもそもそんなやつが罪人になるって……」と疑問が浮かぶものの、何故か(アキラの魔法のせい)訊けないゼッテ。
「とりあえずこの荒れた家を綺麗にしようか、衣食住は何事においても基本だからね!」と片付けを始めるアキラ。好きにさせるゼッテ。
「わぁ、掃除用具がない!」とアキラが騒ぐので(魔法でやれよ…)と思いつつ、言いくるめられアキラを連れて買い出しに出るゼッテ。
あまり治安のいいところではないのでそこここで小競り合いが発生しており、そのうちのひとつにアキラが巻き込まれる。

●2話

小競り合いに巻き込まれたアキラがほけほけしているので、(自分でどうにかできるんじゃないのか?)と思いつつも見捨てられず助けようとするゼッテ。
「俺の持ち物に手を出すな」みたいなことを言ったらアキラが「ありがとうご主人!」と懐いてくるのでなんだこれ、となる。
周りも毒気を抜かれたように、どうしてあんな些細なことで小競り合いになったんだっけ、みたいな雰囲気(アキラの魔法によるもの)
「助かったよ。この隷属印で、攻撃系の行動は制限されているからね」と言われ、「そういうのは先に言え!」となる。
買ったとはいえ罪人を、見捨てないご主人で良かった、私はついてる、というようなことをアキラが言うので、呆れる。「本当についてるやつは罪人になんてならないだろ」
買った罪人を解放することは禁止されているので、また国の管理に戻すかこのまま一緒にいるかしかないのだが、酔った勢いとはいえ買った責任がある、と考えるゼッテ。
罪状を言わない(言えない?)ところはひっかかるが、どうにも悪いやつに思えないので、自分の勘を信じるか、と結論を出す。それをにこにこと眺めているアキラ。
「……本当に、私はついている。ご主人に会えたのだからね」
意味深なアキラに疑問符が浮かぶものの、突然アキラが「じゃあご主人が私を買った分のお金を稼ごうか!」とか言い出すのでそれどころじゃなくなる。お前すっごい高かったんだから無理だっての!


●3話

「やってみないとわからないじゃないか」とアキラが引かないので、どうやって金を稼ぐのか聞いてみると「うーん、大道芸かな」と言い出す。
手品師っぽくいろいろやればそこそこ稼げる自信があるよ、とアキラが言うので、好きにやれ、と自分の用事を済ませに行く。
「私を監視していなくていいのかい?」「隷属印があるから逃げられないだろ」「なるほど、この隷属印というのはそんなに信頼性があるものなんだね」
街の情報屋のところに行って、暗号の手紙を受け取るゼッテ。その内容は暫く前からずっと同じ。反乱軍の旗頭にならないかというもの。
「くそ……俺はそんな器じゃないっての」
自分の身の上を思い返す。王の庶子として生まれたが、早々に王室に危険を感じた母により極秘裏に市井に出され、それとなく母のつながりの者たちに手助けされながら生きてきた。母は謀殺され、それでも手助けを続けてくれた恩はあるが、国家転覆なんて大それたことをするつもりはない。
「やあ、物思いに耽っているところ悪いんだけど、相談があってね。私の大道芸がたいそうお気に召した御貴族様が私を屋敷に招待したいと言うんだ。でも私はご主人の物だから勝手はできないし。というわけでどうしようか?」といつの間にかすぐそばに現れていたアキラが言ってくるので、脱力して好きにしろと言い置く。
なんだかどっと疲れたので俺は帰る、お前はその御貴族様とやらのところに泊まるなりなんなりしろ、いやいやどうせなら私を見せびらかすつもりで一緒に来てくれると助かるな、と押し問答し、ゼッテが押し負ける。



③今後の展開

評判の大道芸師として貴族の間を渡り歩いたアキラが、貴族の汚職の証拠を持って帰ってきたり、この国を憂う貴族を教えてきたり、あっちにこっちに引っ張り回されたりで気の休まることがなくなるゼッテ。
「ご主人には必要ないかもしれないが、ご主人とつながりのある者たちには必要だろう?」
と、諸々わかっているようなことを言われたり、
「ご主人は私が養うから、嫌な仕事はしなくてもいいんだよ」
と、暗部に関わる仕事から手を引くように誘導されたり、手を引いたことによって放たれた刺客をアキラと返り討ちにしたり、刺激的な日々を送る。

「ここまでこの国は腐っているのか……」と思うようなことが続き、アキラ自体が反乱軍が巧妙に用意した、己を旗頭にするための装置じゃないだろうな、などと考え始めるゼッテ。
隷属印があるものの、ゼッテが極めて良識的な人間のため、わりと好き勝手に動くことの許されているアキラだが、たびたび「私はご主人の物だからね」「ご主人の意に添わないことはしないつもりだよ」と懐いて(?)くる。この辺りで「お前女だったのか!」イベントが発生する。ちょっとギクシャクするゼッテと、いつもと変わりないアキラ。息抜き回。

そうこうするうちに隷属印を完全に掌握したアキラがついに己の罪状(国家転覆罪)を明らかにし、嘘だろと決めつけていた最初に話された身の上話が真実だとわかり、ゼッテは頭を抱える。「こんなの、一市民が抱えていいものじゃない」
「いいや、これは巡り合わせだよ、ご主人」「ご主人だってこの国がこのままでいいとは思っていないだろう?」と、隠していた庶子としての名前を呼ばれる。少し驚くが、まあ、アキラだしな、という心境。だいぶアキラという存在に慣らされている。
それ以降、アキラが言葉巧みに叛逆しないかと勧誘し、否応なく自身の血と立場とそれに伴う責任を意識することになったゼッテが腹をくくって反乱軍の旗頭となる。

実はシュルツ国の中枢は復活した魔王に乗っ取られており、今度は裏からじわじわと人間の国を攻め落としていたことが判明し、アキラの導きでかつての六賢人が使っていた聖剣を取りに行ったり、もはや伝説の存在になっている精霊や神霊などに助力してもらったりして、シュルツ国に巣くった魔王とその配下を殲滅するゼッテ。
ゼッテは六賢人の再来、反逆の英雄として称えられることになる。