医薬品の匂いが充満して、あの日退屈だった病院生活は夢のように楽しい幸せな時間を送れていたことを覚えている。病室に戻る時間を過ぎてしまっていても体には何も異常を感じないし、呼吸だって苦しくはならない。
これまでの私なら、少しの時間でも直ぐに息切れに酷い疲労が出て体力が衰えてしまう。そして寝たきりの生活になってしまうのだ。
だけど今日は「魔法」のような薬のお陰で体力が長持ちし、まるで悪い兆しが見えないようにと・・・心の記憶が「メモリーピース」となって繋いでいるようだった。
医者の言いつけに寄れば、「薬」の処方と連携して定期検査を持続する方針だ。体に負担の掛かりやすい体育の授業や激しく動かすことなどは避けるようにと言われていて、常に「ドクターストップ」が掛けられていた。
初めて、医者から経過観察をかねて「一日」退院出来る許可を貰うことが出来た。この日、家族と病院側の話には纏りがなく、母は必死に私のことを気遣って心配する。話の収拾を付けるために私が行動に移して学校に一日でも良いから通いたいという気持ちを伝えてみた。すると眉間に皺を寄せて少し気難しい表情になりながらも医者が登校しながらの「経過観察」ということで承諾を得る。
「医者」は患者のご意見を、少しでも大切に叶えてみせるために本当は難病の患者で症状の重たい人は退院などさせたくないという気持ちがある。でも退屈しのぎに病院に居ることよりも学校へ早く戻りたいという少女の気持ちには揺るぎなく、保証人として一日経過観察を見る方向で動いた。
久しぶりに登校することになった学校は馴染みある懐かしい独特な匂いがして落ち着いた。その「『独特な匂い」』というのは、学校ならではの「塾」のような匂いで檜に近く、床下から機材のような匂いが教室中に染みてくる。それに変わりない灰色の下駄箱に廊下の曲がり角の方角を見るのも好きで教室のクラスを示す札や職員室の配置も変わりなかった。・・・ずっと連絡も取り合っていないみんなと久しぶりに会う。今更だけど、みんなに会うことに気まずい性格で顔を見ると緊張してしまう。堂々と真正面からみんなに久しぶりの挨拶でもして入れば良かったのに、私にはそれが出来ない。だって、変わりないかなとか、私が突然学校に登校しないようになってからの様子に変化がないかな。など余計に思ってしまうからだ。
叶美はずっと幼い頃からの病気があって、それは生まれつき心臓の病気で入院生活を送り続けている可愛そうな少女なのだ。幼少期の頃から一人の友達になってくれたのは「辻利行」君だけで、あまりみんなとも会話をしないで一人絵本を読んでいる。
本当は楽しそうに聴こえてくる他の子達と一緒に外で遊びたいのに、外で遊ぶことも出来ない。――私が「心臓の病気」持ちだっていうことで、外に出れば立ちくらみや吐き気。息切れという症状が直ぐに出始めて倒れてしまう。極力一人で居る時間を維持して静かに絵本を読んで休むほかなかった。
絵本の世界は不思議と明るくて、心が落ち着く。だって一人で寂しい思いをしないで良いようにと、物語の住人が私を楽しませて本の世界へ誘ってくれる。
本を一人で見ているのは、周りに誰も居ない寂しさが満載で寂しかったけど、ファンタジーで魔法の国に居るかのような体験をしているみたいに心地よくて「わくわくとドキドキ感」が寂しさを「楽しい心」へと変えてくれた。そんなある日、絵本の世界に出てくる優しい男の子のような青年の彼が「辻君」で、いつの間にか二人で過ごす時間が増えていたのが幼少期の頃にあった懐かしい記憶。小学校低学年のときは病気の進行があって、あまり学校には行けていない。当然、修学旅行にも参加できず成績も気に掛けている場合ではないほどの深刻な時期があったことを今でも思い出す。
――まぁ・・・その中でも高校の教師で担任の先生、神谷先生は去年新しく赴任してきた男性の先生なのに、良く転んでしまうという少し残念でドジな一面があった。外見はクラスの子にも人気があるほどのイケメンで格好いい先生なのに、教室に入ってくると毎回のように必ず教壇の前で足を躓かせて転んでしまう所とか、爽やかに「おはよう」と挨拶をしながら、うっかり自分で自分の足を踏みつけて転んでしまう所などがあり、期待外れも少しドジで残念な先生だった。でも長所で良いところは、みんなに勉強を教えることだけは一流と言っても良いくらいの先生で凄く励みになる。他には授業について行けていない人のために「勉学方法」を変える提案を出したり、困っている人が居ると優しく気遣ってくれたりもする良い先生だった。それでいて、みんなが評価に値《あたい》する先生はイケメンだけど、ドジな一面がある所などが慕われている。
長い間ずっと休学中だったこともあって、みんなに会うことが本当に緊張してしまうけど、先に伝えるべき内容をしっかり頭に入れて職員室に行く。そして、これまでの事情の説明をする。長々と暗記して覚えることが苦手で医者からの文章を校長先生に手渡し、その後で教室に行くことに少し不安があった。職員室を出てから教室へと向かって歩き出す。でも足が教室を拒んでしまい震える足にぐっと力を入れて押さえた。渡り廊下の窓から見る景色は病院に居る時と同じに見えて少し懐かしく思える。
この日までに、本当に時間が掛かった。病院で治療の一環として薬や点滴と苦い思いを沢山してきた。高校を途中で「休学」している私は、もう二度と退院なんて出来る日は来ないのだろうな。と思っていたからだ。でも「一日」というレアで幸せな時間を病院から貰った私は「辻君」の出る体育の授業を静かに見学する。休学中だった私が久しぶりに顔を見せたときの辻君の顔は少し涙目になり、喜びに満ち溢れながら喜んでくれた。彼は泣きながら言葉を失い、沈黙した後に家族のように抱きついた。学校側には体調不良でしばらくの間「休学中」ということで連絡は行き渡っていたのだ。彼が病院にいることを知らなくても、携帯で連絡メールを取り合うことも出来たはずなのに、私は余計な心配をさせたくないという身勝手な気持ちで連絡を入れることはなかった。そんな私のことだから、電話やメールをしてみても既読にならない私のことをすごく心配した彼は学校に顔を出した私を見て青ざめた表情をしながら、ひょろひょろになって泣きそうになる。「『病院」』での出来事だけは彼に話せず、連絡をしたい気持ちはあったのに、どうしても出来なかったと苦しい言い訳で終らせ、見学をしながら体育の授業を見守る。女子はバトミントンで男子はバスケの練習試合のような動きで、ゴールを狙ってくる者を妨げるように「サーブ」へと「ゴール」を守備良く決める。そして笛の合図が掛かると次は対戦形式となって彼が「ドリブル」を交わして素早い動きで「ゴール」を定めた。
バトミントンをしていた女子みんなが後ろでしている男子の方角を見て、あっという間に観戦で周りが盛り上がり、彼は瞬く間に人気者となった。「体育」の授業だからといっても私以外に見学している人はあまり居なかったけど、神経に体育の授業と向き合いつっつも、事情を知らない他の人みんなが明らかに聞き耳を立てて「体調不良か何か」で、さぼっている者だとも思われていて、体操着を持ってくることを忘れてしまったからだと、そう思われていた。
「一日」だけじゃない。体育の授業だけ、毎回同じ事を何度も繰り返してからというものの周りの人達みんなの態度が一変して変わった。私が「体育」の授業だけをさぼっていると、そう見えてしまう。他には気に入らなくて嫉妬してしまう人に真面目に授業を受ける気がないという理由で頒価を持つ人だっているからだ。
――だからといって、別にそれは気にとめることなんてない。他の人がどう思っているのだとか、どんな風に思われているのだろう。とかを気にすることはないのだから。
大抵の事情は、ちゃんと学校側に連絡で行き渡っているのだから心配しなくても良い案件だけど、他の人皆が事情を知らなくて、悪い噂を立てるのなら面と向かい、前向きな姿勢で事情を話せば良いのだ。そうすればきっと分かってくれる。
だけど、この子は、ちょっと気の弱いところがあって、優しすぎな一地面があるから、皆に誤解されやすい所もあって、前向きに面と向かって話を繰り出せないでいるのだ。・・・小さく身構えていないで、ちゃんと自信を持ってみて。と伝えてあげたくなる。・・・みんなが皆いじめで話しているわけじゃなくて、ただ誤解に気付けない状態で心に思ったことを話してしまうだけで、悪気も何もない。ただ他の人が心に思っても見ないことを勝手に連想させて、そう思い込んでしまう。
――「これは、私の悪い一面でもあった」
これまでの私なら、少しの時間でも直ぐに息切れに酷い疲労が出て体力が衰えてしまう。そして寝たきりの生活になってしまうのだ。
だけど今日は「魔法」のような薬のお陰で体力が長持ちし、まるで悪い兆しが見えないようにと・・・心の記憶が「メモリーピース」となって繋いでいるようだった。
医者の言いつけに寄れば、「薬」の処方と連携して定期検査を持続する方針だ。体に負担の掛かりやすい体育の授業や激しく動かすことなどは避けるようにと言われていて、常に「ドクターストップ」が掛けられていた。
初めて、医者から経過観察をかねて「一日」退院出来る許可を貰うことが出来た。この日、家族と病院側の話には纏りがなく、母は必死に私のことを気遣って心配する。話の収拾を付けるために私が行動に移して学校に一日でも良いから通いたいという気持ちを伝えてみた。すると眉間に皺を寄せて少し気難しい表情になりながらも医者が登校しながらの「経過観察」ということで承諾を得る。
「医者」は患者のご意見を、少しでも大切に叶えてみせるために本当は難病の患者で症状の重たい人は退院などさせたくないという気持ちがある。でも退屈しのぎに病院に居ることよりも学校へ早く戻りたいという少女の気持ちには揺るぎなく、保証人として一日経過観察を見る方向で動いた。
久しぶりに登校することになった学校は馴染みある懐かしい独特な匂いがして落ち着いた。その「『独特な匂い」』というのは、学校ならではの「塾」のような匂いで檜に近く、床下から機材のような匂いが教室中に染みてくる。それに変わりない灰色の下駄箱に廊下の曲がり角の方角を見るのも好きで教室のクラスを示す札や職員室の配置も変わりなかった。・・・ずっと連絡も取り合っていないみんなと久しぶりに会う。今更だけど、みんなに会うことに気まずい性格で顔を見ると緊張してしまう。堂々と真正面からみんなに久しぶりの挨拶でもして入れば良かったのに、私にはそれが出来ない。だって、変わりないかなとか、私が突然学校に登校しないようになってからの様子に変化がないかな。など余計に思ってしまうからだ。
叶美はずっと幼い頃からの病気があって、それは生まれつき心臓の病気で入院生活を送り続けている可愛そうな少女なのだ。幼少期の頃から一人の友達になってくれたのは「辻利行」君だけで、あまりみんなとも会話をしないで一人絵本を読んでいる。
本当は楽しそうに聴こえてくる他の子達と一緒に外で遊びたいのに、外で遊ぶことも出来ない。――私が「心臓の病気」持ちだっていうことで、外に出れば立ちくらみや吐き気。息切れという症状が直ぐに出始めて倒れてしまう。極力一人で居る時間を維持して静かに絵本を読んで休むほかなかった。
絵本の世界は不思議と明るくて、心が落ち着く。だって一人で寂しい思いをしないで良いようにと、物語の住人が私を楽しませて本の世界へ誘ってくれる。
本を一人で見ているのは、周りに誰も居ない寂しさが満載で寂しかったけど、ファンタジーで魔法の国に居るかのような体験をしているみたいに心地よくて「わくわくとドキドキ感」が寂しさを「楽しい心」へと変えてくれた。そんなある日、絵本の世界に出てくる優しい男の子のような青年の彼が「辻君」で、いつの間にか二人で過ごす時間が増えていたのが幼少期の頃にあった懐かしい記憶。小学校低学年のときは病気の進行があって、あまり学校には行けていない。当然、修学旅行にも参加できず成績も気に掛けている場合ではないほどの深刻な時期があったことを今でも思い出す。
――まぁ・・・その中でも高校の教師で担任の先生、神谷先生は去年新しく赴任してきた男性の先生なのに、良く転んでしまうという少し残念でドジな一面があった。外見はクラスの子にも人気があるほどのイケメンで格好いい先生なのに、教室に入ってくると毎回のように必ず教壇の前で足を躓かせて転んでしまう所とか、爽やかに「おはよう」と挨拶をしながら、うっかり自分で自分の足を踏みつけて転んでしまう所などがあり、期待外れも少しドジで残念な先生だった。でも長所で良いところは、みんなに勉強を教えることだけは一流と言っても良いくらいの先生で凄く励みになる。他には授業について行けていない人のために「勉学方法」を変える提案を出したり、困っている人が居ると優しく気遣ってくれたりもする良い先生だった。それでいて、みんなが評価に値《あたい》する先生はイケメンだけど、ドジな一面がある所などが慕われている。
長い間ずっと休学中だったこともあって、みんなに会うことが本当に緊張してしまうけど、先に伝えるべき内容をしっかり頭に入れて職員室に行く。そして、これまでの事情の説明をする。長々と暗記して覚えることが苦手で医者からの文章を校長先生に手渡し、その後で教室に行くことに少し不安があった。職員室を出てから教室へと向かって歩き出す。でも足が教室を拒んでしまい震える足にぐっと力を入れて押さえた。渡り廊下の窓から見る景色は病院に居る時と同じに見えて少し懐かしく思える。
この日までに、本当に時間が掛かった。病院で治療の一環として薬や点滴と苦い思いを沢山してきた。高校を途中で「休学」している私は、もう二度と退院なんて出来る日は来ないのだろうな。と思っていたからだ。でも「一日」というレアで幸せな時間を病院から貰った私は「辻君」の出る体育の授業を静かに見学する。休学中だった私が久しぶりに顔を見せたときの辻君の顔は少し涙目になり、喜びに満ち溢れながら喜んでくれた。彼は泣きながら言葉を失い、沈黙した後に家族のように抱きついた。学校側には体調不良でしばらくの間「休学中」ということで連絡は行き渡っていたのだ。彼が病院にいることを知らなくても、携帯で連絡メールを取り合うことも出来たはずなのに、私は余計な心配をさせたくないという身勝手な気持ちで連絡を入れることはなかった。そんな私のことだから、電話やメールをしてみても既読にならない私のことをすごく心配した彼は学校に顔を出した私を見て青ざめた表情をしながら、ひょろひょろになって泣きそうになる。「『病院」』での出来事だけは彼に話せず、連絡をしたい気持ちはあったのに、どうしても出来なかったと苦しい言い訳で終らせ、見学をしながら体育の授業を見守る。女子はバトミントンで男子はバスケの練習試合のような動きで、ゴールを狙ってくる者を妨げるように「サーブ」へと「ゴール」を守備良く決める。そして笛の合図が掛かると次は対戦形式となって彼が「ドリブル」を交わして素早い動きで「ゴール」を定めた。
バトミントンをしていた女子みんなが後ろでしている男子の方角を見て、あっという間に観戦で周りが盛り上がり、彼は瞬く間に人気者となった。「体育」の授業だからといっても私以外に見学している人はあまり居なかったけど、神経に体育の授業と向き合いつっつも、事情を知らない他の人みんなが明らかに聞き耳を立てて「体調不良か何か」で、さぼっている者だとも思われていて、体操着を持ってくることを忘れてしまったからだと、そう思われていた。
「一日」だけじゃない。体育の授業だけ、毎回同じ事を何度も繰り返してからというものの周りの人達みんなの態度が一変して変わった。私が「体育」の授業だけをさぼっていると、そう見えてしまう。他には気に入らなくて嫉妬してしまう人に真面目に授業を受ける気がないという理由で頒価を持つ人だっているからだ。
――だからといって、別にそれは気にとめることなんてない。他の人がどう思っているのだとか、どんな風に思われているのだろう。とかを気にすることはないのだから。
大抵の事情は、ちゃんと学校側に連絡で行き渡っているのだから心配しなくても良い案件だけど、他の人皆が事情を知らなくて、悪い噂を立てるのなら面と向かい、前向きな姿勢で事情を話せば良いのだ。そうすればきっと分かってくれる。
だけど、この子は、ちょっと気の弱いところがあって、優しすぎな一地面があるから、皆に誤解されやすい所もあって、前向きに面と向かって話を繰り出せないでいるのだ。・・・小さく身構えていないで、ちゃんと自信を持ってみて。と伝えてあげたくなる。・・・みんなが皆いじめで話しているわけじゃなくて、ただ誤解に気付けない状態で心に思ったことを話してしまうだけで、悪気も何もない。ただ他の人が心に思っても見ないことを勝手に連想させて、そう思い込んでしまう。
――「これは、私の悪い一面でもあった」