第一章 あの日の思い出

 桜が舞う高校生活に私は新しい発見を想像しながら、中学の頃とは違う楽しいことに期待をしていた。中学の時はそれほど良い思い出もなく笑顔が曇りかけるほどの暗い日常を淡々(たんたん)と送り、趣味は図書室で本を読む。それ以外のことは音楽の授業が好きだったことで一人きりの時間を多く取ることだったから友達は居ない。でも授業のチャイムが鳴り、周辺が静寂(せいじゃく)に包まれた時に体が(こわ)ばって教室の前まで来ているのに中に入ることが怖くなって一時停止する。教室から遠ざかり人目の着かないトイレに一時期避難を始めたり、一時間目の終わりに早々と教室に入れたことは何度かあり、繰り返しトイレに一時期避難をすることも良くあって、苦手な教科にも出れない。そういう中学生だった。

 高校の成り立ちはパンフレットで見るよりも建物が大きくて、入学した初日は教室に人があまり居ないことに驚いて当然のことながら顔見知りの人ばかり。そこで中学とは違う形でアピールしたくて少しずつ話は出来た。それも女子だけで男子とは(いま)だに口を()けない。唯一の楽しみにしていることは図書室に行き、一人きりの時間を過ごすために毎日通い始めて本を読むこと。その場は私にとっての癒やしの場所だったから。
授業の始まるチャイムが鳴ってしまうのは早すぎるくらいに嫌いでずっと本に(すが)りついていたと思った。だって周りを一瞬にして音も人の居る気配すら消えてしまえるほどに集中して読み続け、自分自身が本の世界の住人と楽しく過ごして、時間を忘れてしまうくらい意気投合(いきとうごう)してみたり一緒に冒険を楽しむという物語の主役にも慣れて夢物語が楽しくてたまらない。・・・いっその事誰にも邪魔をされなくて済むように「時」だけが止まってしまえれば良いのにと思った。現代に(いた)る今でも同じ事で授業について行けないようなことは起こらなくて前に進む勇気と教室には入れる機会が増える。ただ・・・変わることの出来ないのは教室以外の授業が原因で体育や工作室という移動教室に該当する。

 体育は全てが苦手教科だったわけじゃない。得意な分野と苦手な分野もある中で授業に遅れて参加出来なくて辛い気持ちになることや苦手な教科も「出来ない・出来る」という理由から、その場に一秒でも居たくなくて姿を消し、クラスの人と目が合っても遠ざけてトイレに逃げ込んでしまう悪い癖が出た。

 工作室の授業も物を創ることは好きでも同じ事があって、周りに迷惑を掛ける。そしてダンスパフォーマンの先生が来日してダンサーの縁起(えんぎ)を見せて貰うと格好良くて憧れる人だった。少しは楽しめるかもと思った。私でもみんなと曲に合わせて一人ずつダンスを習得するために身構(みがま)える。失敗してもめげずに()える。なのに私は踊ることが恥ずかしくなって、周りがいくら説得しょうとも耳を貸さずに気を張る。傲慢(ごうまん)()(まま)なのが嫌になって泣いてしまったこと。色々とあり過ぎて「トイレ」の中でひそひそと泣く声や誰かがいるという噂にもなって、そんな「噂」なんかないよ。というみたいに掃除をすることも好きだった私は三年間ずっとトイレ掃除に志願(しがん)する。

 もう一つの出会いは好きな彼氏と出会うことだった。・・・事の始まりは私が高校に入学してしばらくした頃に髪の()(ぎわ)の色が少し白みがかっているという些細(ささい)(いじ)めに合わされていた男子生徒を(かば)ったことで次第に心が()かれて毎日一緒に居る時間を堪能(たんのう)したんだ。

 高校生活は長いと感じながらもあっという間に短くもあって、お互いに大人になればどうなるか道は分からないから私は彼に思い切って今あるこの高校で三年間だけで良いから私だけの彼氏で居て。他に現われても誰の物にもならないで。絶対に。・・・もし他の人が来てもちゃんと「好きな人が居るから」と断って!と熱い情熱を(いだ)いて彼に伝えたこともあったな。と頬を赤らませて大人になった私は心の中であの日・・・過去の高校生活「女学生」の頃を思い返していた。