「詳しいことはまだ一年生のお前たちには教えられんが……慶賀と泰紀が受けたのは神がもたらす災いだ。神の災いの性質は言祝ぎだから祝詞で祓うことはできない。だから同程度の強い呪詞をぶつけて相殺したんだ」

「呪詞で相殺……」


乾いた咳をした禄輪さんに、玉じいは水の入ったコップを差し出した。

両手でそれを受け取って、ほぼ一口でそれを飲み干す。


「覚えておきなさい。神の災いは本来人間が相殺できる程度のものでは無い。あらかたお前たちを少し脅かして反省させようと促して下さったんだろう。この程度で済んだ事に感謝しなさい」


真っ直ぐ目を見つめることが出来なくて、畳の縁に視線を落とす。

顔を上げなさい、と言われても鉛のように頭が重かった。


「お前たちは自分の力を過信しすぎだ。確かにこの数ヶ月で現役の神職ですら遭遇しないような出来事を沢山経験した。確実に成長しているのは認めよう。けれどそれは全てたまたま運が良かっただけだ。本来のお前たちはまだ神職の見習い、未熟で出来ないことや知らないことの方が多い。今回のように敵わない相手と敵対した時に、お前達に待ち構えている未来は「死」だ」


どの言葉も確実に私の胸を刺していく。

自分の力を過信していたのも事実、なんでも出来るような気になっていたのも事実、自分たちの力で何とかできると思ったのも事実だ。