目を見開いたおばあちゃんはしばらくぽかんとして、ふふっと小さく笑った。
「そんな大層なお役目ではあらへんよ。毎日朝晩にこうして神棚に手を合わせてるだけやし」
少し恥ずかしそうに肩を竦めたおばあちゃん。
違った……もしかしたらと思ったのに。
でもそうか、もし言霊の力があるとするならば先程の祝詞奏上で他のみんなも何かを感じたはずだ。
私だけが感じたということは、思い違いだったんだろうか。
「……もしかしたら神棚の御祭神さまに、巫女として認められたのかもしれない」
「認められる……?」
「かなり昔に、どこかの社の氏子のひとりに、そういう事があったと父から聞いたことがある。社に毎日参拝するおじいさんが居て神主が代替わりする時に次の神主に選ばれたことがあるって」
神主は世襲制ではなく、社に祀られる御祭神の信託によって選ばれる。血の濃さや家系は関係なく、御祭神さまが選んだ次代の神主に相応しい仁徳のある人が選ばれる。
学校では確かにそう習った。