まるで怒りを宥めるように、癒すように詞が紡がれていく。
それはじわじわと広がってやがて最後の詞を紡いだ次の瞬間、また鈴の音色がして今度は音色は少しずつ遠ざかっていく。
立てないほどの圧倒的な気配が少しずつ止んで、お帰りになったのだと分かった。
上手く体に力が入らず、地面に寝そべったままでいると禄輪さんが私の腕を掴んで立ち上がらせてくれた。
「ありが、」
お礼の言葉は叩かれた頬の痛みで途切れた。
今までにないほどの怖い顔をした禄輪さんは何も言わずに私を一瞥すると、同じように立ち上がれないでいる嘉正くんと来光くんを立ち上がらせて、二人には脳天に拳骨を落とした。
痛みで涙が滲んだけれど、禄輪さんがもし来てくれなかった時のことを考えるとその痛みで泣いていいはずがなかった。
気を失う泰紀くんと慶賀くんの様子を伺い、一層険しい顔をする。ふたりを軽々と肩に担ぐと歩き出した。
慌ててその背中を追いかけた私達に、禄輪さんは厳しい目をした。
「お前たちはやる事を終わらせてから来なさい」
唇をかみしてめて項垂れるように頷いた。