肌を刺すような熱が神の怒りに触れたものだと分かった瞬間、何故か息苦しさが少しだけ軽くなった気がした。
え、と目を見開いたその時。
「────お前たち、そろそろいい加減にしなさい」
聞きなれた低い声が聞こえて顔を上げる。
灰色味がかった瞳と目が合った。
「……禄輪さんっ!」
神職の服装ではなく着流し姿の禄輪さんは颯爽と私たちを横切ると、私達が立てた祭壇の前に立ち柏手を打った。
「畏しや打ち靡く天の限り尊きろかも打ち続をく地の極み萬の物を生み出でて統べ治め給ふ大神世の限り有りの尽尽落つる事無く漏るる事無く命を分かち霊を通はし稜威輝き給ふ神の御名を天照國照統大神と称へ奉りて言祝ぎ真祝に────」
聞いた事のない祝詞を一息で奏上する。
穏やかで明朗なその声は怒りに満ちた大地の空気を優しく包み込む。