「一体何が────」
私達は体を叩きつけられたかと思うほどの圧倒的な力に、崩れるように地面に膝をついた。
指一本ピクリとも動かない。辛うじて瞬きだけが出来る。
その瞬間、頭の奥に清涼な鈴の音色が鳴り響いた。音色はどんどんと大きくなる。
一定の音色で頭の中に響くそれには聞き覚えのあって目を見開く。
この圧倒的な強い力、体の芯を震えさせる畏怖に思い返せば覚えがあった。
でもまさか、そんなわけ。
だってこの家で起きていたのは間違いなく悪意ある怪奇現象だった。
でも、でも────。
私は知ってる、この鈴の音は足音だ。尊い方が現世へ天下りなさる時の足音だ。
もし、それが本当なのだとしたら。
私達が祓おうとしていたのが憑き物ではなかったとしたら、私達は謝って許されるような程度ではないことをしたことになる。
「お怒りや……」
恵理ちゃんのおばあちゃんの声が聞こえた。
ああ、やっぱりそうか。
私達が祓おうとしたのは────神だ。
それはどんな罪よりも、重い。