言祝ぎの子 弐 ー国立神役修詞高等学校ー


祝詞を途中で止めてしまうのはあまり良くないことで、他の言葉を口にすることは尚更良くない。

続けよう、と嘉正くんに目で促されひとつ頷く。


もう一度静かに手を揃え、みんなと息を合わせる。


「……磐根木根立草(いわねきねたちくさ)の片葉(かきは)をも事止(ことや)めて天(あめ)の磐座放(いわくらはな)ち天八重雲(あめやへぐも)を伊頭(いつ)の千別(ちわき)に千別(ちわき)て天降(あまくだ)し依(よ)さし奉(まつ)りき此(か)く依(よ)さし奉(まつ)りし四方(よも)の國中(くになか)と大倭日高見(おほやまとひだかみ)の國(くに)を安國(やすくに)と定(さだ)め奉(まつ)りて下津磐根(したついわね)に宮柱太敷(みやばしらふとし)き立(た)て高天原(たかまのはら)に千木高知(ちぎたかし)りて皇御孫命(すめみまのみこと)の瑞(みづ)の御殿仕(みあらかつか)へ奉(まつ)りて天(あめ)の御蔭日(みかげひ)の御蔭(みかげ)と隠(かく)り坐(ま)して安國(やすくに)と平(たひら)けく知食(しろしめ)さむ國内(くぬち)に成(な)り出(いで)む天(あめ)の益人等(ますひとら)が過(あやま)ち犯(おか)しけむ種種(くさぐさ)の」


今度は手のひらが焼けるように熱い。まるで熱した鉄棒を押し当てられているようだった。

その痛みを堪えるように奥歯を噛み締める。


「────ッ、罪事(つみごと)は天津罪(あまつつみ)と畔放なち溝埋(みぞ)うめ樋放(ひはな)ち……、頻蒔(しきまき)串刺(くしさし)生剥(いきはぎ)逆剥(さかはぎ)屎戸(くそへ)許許(ここ)太久(だく)の罪を天津罪(あまつつみ)と法別(のりわけ)て……國津罪(くにつつみ)と、は……生膚斷(いきはだたち)死膚斷(しにはだたち)白人(しろひと)胡久美(こくみ)己が母犯せる罪己が子犯せる罪母と子と犯せる罪子と母と犯せる罪……ッ、畜(けもの)犯せる罪昆虫(はうむし)の災ひ高津神(たかつかみ)の災ひ、畜仆(たう)し蠱物為(まじものせ)る、ッ、罪許許(ここ)太久(だく)の罪出でむ此(か)く出でば……!」


首を絞められるような息苦しさに言葉が詰まる。

全身を上から強く押し付けられている様な圧迫感がして膝が震え、立っているのもままならずその場に膝をついた。


「……ッ、く」


苦しげな息遣いがして顔を上げると嘉正くんも来光くんも、同じようにしてその場に膝を着いていた。