祝詞を途中で止めてしまうのはあまり良くないことで、他の言葉を口にすることは尚更良くない。

続けよう、と嘉正くんに目で促されひとつ頷く。


もう一度静かに手を揃え、みんなと息を合わせる。


「……磐根木根立草(いわねきねたちくさ)片葉(かきは)をも事止(ことや)めて(あめ)磐座放(いわくらはな)天八重雲(あめやへぐも)伊頭(いつ)千別(ちわき)千別(ちわき)天降(あまくだ)()さし(まつ)りき()()さし(まつ)りし四方(よも)國中(くになか)大倭日高見(おほやまとひだかみ)(くに)安國(やすくに)(さだ)(まつ)りて下津磐根(したついわね)宮柱太敷(みやばしらふとし)()高天原(たかまのはら)千木高知(ちぎたかし)りて皇御孫命(すめみまのみこと)(みづ)御殿仕(みあらかつか)(まつ)りて(あめ)御蔭日(みかげひ)御蔭(みかげ)(かく)()して安國(やすくに)(たひら)けく知食(しろしめ)さむ國内(くぬち)()(いで)(あめ)益人等(ますひとら)(あやま)(おか)しけむ種種(くさぐさ)の」


今度は手のひらが焼けるように熱い。まるで熱した鉄棒を押し当てられているようだった。

その痛みを堪えるように奥歯を噛み締める。


「────ッ、罪事(つみごと)天津罪(あまつつみ)と畔放なち溝埋(みぞ)うめ樋放(ひはな)ち……、頻蒔(しきまき)串刺(くしさし)生剥(いきはぎ)逆剥(さかはぎ)屎戸(くそへ)許許(ここ)太久(だく)の罪を天津罪(あまつつみ)法別(のりわけ)て……國津罪(くにつつみ)と、は……生膚斷(いきはだたち)死膚斷(しにはだたち)白人(しろひと)胡久美(こくみ)己が母犯せる罪己が子犯せる罪母と子と犯せる罪子と母と犯せる罪……ッ、(けもの)犯せる罪昆虫(はうむし)の災ひ高津神(たかつかみ)の災ひ、畜(たう)蠱物為(まじものせ)る、ッ、罪許許(ここ)太久(だく)の罪出でむ()く出でば……!」


首を絞められるような息苦しさに言葉が詰まる。

全身を上から強く押し付けられている様な圧迫感がして膝が震え、立っているのもままならずその場に膝をついた。


「……ッ、く」


苦しげな息遣いがして顔を上げると嘉正くんも来光くんも、同じようにしてその場に膝を着いていた。