はは、と笑った嘉正くん。

その達観した横顔に絶句する。同い年とは思えない。

私よりもうんと大変な思いをしてきたんだろうなぁとその苦労を思うと胸が痛い。


「嘉正〜、こっちの用意出来た!」

「オッケー、ありがとう。じゃあ最終確認しよう」


私達は祭壇の前に集まった。


「まず、慶賀と泰紀で煙を中に入れる。その間に俺と巫寿、来光で修祓から献饌(けんせん)まで終わらせちゃおう」


了解、とみんなが大きく頷きそれぞれの配置に着いた。

ばくばく波打つ心臓をそっと上から押える。

思い返せば、授業の一環で地鎮祭の模儀を行ったことはあるけれど、こうしてちゃんとした神事を人前でやるのは初めてだ。


皆は家の手伝いで慣れているのか無駄がなく手際が良い。

せめてもと、自分のできる範囲のことはテキパキ動くようにした。



家の中に入っていった慶賀くんたちから「こっちはスタンバイオッケー!」とトークアプリにメッセージが届き「じゃあ、始めようか」と嘉正くんが姿勢を正した。