小一時間もしないうちに玄関の前には簡易の祭壇が組まれて、その後ろには恵理ちゃんの両親に叔母さん、おばあちゃんが並んでいた。
あっさりと事が進んだことに信じられないという顔をした恵理ちゃんが私のシャツの裾を引っ張って顔を寄せた。
「ねえ、嘉正くんはどんな魔法を使ったの? 両親はともかく、あの占いオカルト系が大っ嫌いなおばさんまで」
「あはは……魔法って言うかなんと言うか」
少し前の光景を思い出す。
『────憑き物祓いの神事ぃ?』
案の定胡散臭そうに顔を顰めたおばさん達に「ほらぁ……」と心の中で呟く。
恵理ちゃんの言った通りだ。やっぱりいきなり憑き物やお祓いなんて言葉が出てくれば誰だって胡散臭さく思うはず。
そんな私とは正反対に落ち着いた様子でひとつ頷いた嘉正くん。
『恵理さんが家で起きる怪奇現象を不安がってるんです。皆さんには不要に思われるかも知れませんけど、恵理さんが安心出来るための言わばパフォーマンスとして受け取って下さい。僕たちは神職の見習いですし、恵理さんの友達です。お金を取ったりもしませんので、まあ、無料のお祓いとでも思ってもらえれば』