ちょっと目頭が熱くなって胸の前でそれを抱きしめる。
嘉正くんは何も言わずに私の背中にそっと触れた。
「……ごめんね、大丈夫。私ね、両親が神職だった頃のこと何も知らないの。だからこうして二人の事を少しだけだけど知ることができて、嬉しくて」
そっか、と嘉正くんは目を弓なりにした。
「学期末の昇階位試験に合格して直階になった時、巫寿がそれを貰い受けたらどう?」
「……何としても合格しなきゃ、だね」
「俺もね」
ふふ、と顔を見合せて笑う。
木箱の中からは他にも巫女鈴や神主舞の扇、そして神事に使う神具が沢山出てきた。
今朝、仏壇にしっかりと手を合わせて「少しの間貸してね」とお母さんたちにお願いした。
なんだか二人が力を貸してくれるような気が来て心強かった。