「オーサキの被害は、家だけじゃないんだ」

「……え?」


恵理ちゃんの瞳が不安で揺れる。

憑き物に憑かれた家の特徴は、主に怪奇現象が起こるとされている。誰もいない部屋や空間から音が聞こえてくる所謂ラップ音や失せ物、窓やガラスになにかの影が映ったり、水周りの故障。

それは憑き物が居る家には起こりうる現象だけれど、その憑き物の種類によって怪奇現象の種類は異なってくる。


恵理ちゃんの家に居る"オーサキ"と呼ばれる憑き物も、他とは違う怪奇現象を起こす特性があると、授業で習った覚えがある。

それは────。


「家主の内蔵を喰らう────特性があるんだ」


ひ、と息を飲む声が聞こえた。

心当たりがあるらしく動揺が隠せないのか、恵理ちゃんは数歩後ろによろけて口元を抑えた。


咄嗟にその背中に手を添える。



「じゃあ、もしかして……おばあちゃんが急に腎臓が悪くなったのは────」



嘉正くんは険しい顔で頷いた。



「オーサキが憑いたせいかもしれない」

「そんなっ……」