アイスを買いに行ってくる、という名目で家を抜け出した私たちはコンビニまでの道のりを並んで歩く。

太陽は半分ほど山に隠れて町中がオレンジ色の優しい光に包まれていた。


「それで、分かったんだよね……?」


恐る恐る尋ねた恵理ちゃんに、私たちはひとつ頷いた。


「恵理ちゃんの家に憑いてるのは、"オーサキ"って呼ばれる憑き物だ」

「オーサキ?」


恵理ちゃんは聞きなれない言葉に眉間に皺を寄せて聞き返す。


「どういう妖怪なの? そもそも憑き物って妖怪なの?」


恵理ちゃんが私の顔を見てそう尋ねる。

そうなると回答するのは私になり、えっとと言葉を選ぶふりをしながら習ったことを思い出す。


「憑き物って言うのは、人や土地、建物に乗り移って災いをなすと信じられている動物霊や生霊、死霊のことだよ。簡単に言えば幽霊ってことになるかな。だから妖ではないよ」

「じゃあウチに幽霊が取り憑いてるってこと……?」

「そういうこと、になるかな」


両腕を抱きしめた恵理ちゃんは顔を強ばらせる。