これお願い、と渡されたお菓子を大皿に盛り付けながら口を開く。
「ねえ恵理ちゃん。家の事以外で、最近変に思うこととか変わったことってある?」
「家の事以外?」
こぽこぽとコップに麦茶を注ぎながら恵理ちゃんは首を捻る。
「家の事以外で言ったら昨日話した通り、お父さんが怪我したり、お母さんがパートをクビになったり……あ、最近父方の叔母も一緒に暮らしてるんだけど、そうなったきっかけが離婚なの。……旦那さんが浮気してね。そういうのって関係ある?」
「どうだろう……。授業ではまだ習ってないだけなのかもだけれど、聞いたことは無いかな……? でも、おじさんの怪我は少し気になるね」
妖や幽霊が人にイタズラをして怪我を負わせるという話は聞いたことがある。
けれど仕事をクビになったり離婚させることまで出来るのだろうか?
その時、かちゃんと玄関の扉が開く音がした。買い物袋ががさがさ揺れる音がして、廊下が軋む音がする。
「はあ、ほんと暑い。恵理お母さんにも麦茶……あら? やだみこちゃんじゃない!」
台所に入ってきたのは恵理ちゃんのお母さんだった。